からだ

出血が止まりません、何が起きているか心配です。

  • 撮影・森山祐子 イラストレーション・小迎裕美子、川野郁代 文・越川典子、青山貴子

大豆大の子宮筋腫が、15年間で30cmまでになるなんて。

小迎 3年前に子宮全摘の手術をして、すっきり、体調はいいのですが、それまでは大変でした。最初、筋腫は大豆くらいの大きさだったんです。そのうち7cmになり、15年後には30cm。階段を上れば3段で動悸息切れ。氷や珈琲豆、フィルターに残った珈琲の粉まで、ガリガリボリボリ食べていました。

小山 それだけ長い間、多量の出血をしていたら、ひどい貧血だったはず。異食も鉄欠乏症の症状の一つですから。

小迎 ほかにも、トランポリンの取材に行けば、ちょっと跳んだだけで信じられないくらいの尿漏れがして。

小山 大きくなった筋腫が膀胱や腸、背骨を圧迫するわけです。腰痛になることもあります。もう少し早く手を打つ機会はなかったですか。

小迎 14cmの時に、医師から「子どもが欲しいなら取ったほうがいい」と言われたのですが、産む予定はなかったので、手術しなくていい、と。

越川 その結果、毎日のQOLが下がることまでは考えられないですものね。

小迎 こんなにひどくなるとは。

小山 筋腫を持っている人は、30代以上の3〜4人に1人。薬物治療や手術など、治療法はたくさんありますから、その議論が、子どもを産む予定があるかどうかだけではなく、もっと幅広く医師と話したほうがよかったですね。

小迎 筋腫を小さくする薬物療法や、全摘しない他の方法も医師から説明を受けましたが、そのデメリットが気持ち的に上回っていました。

越川 後悔はありますか?

小迎 実は、まったく。最終的に子宮全摘になりましたが、すぐに決断しました。今は、本当に快調なんです。

小山 よかったですね。ただ、デメリットも知っておいてほしいので話しますが、子宮を全摘するということは、体内を100カ所以上切ることになりますし、2時間以上、内臓を空気にさらすことになるんですね。血液検査で「加齢マーカー」を見ると、手術をすることでどうしても数値が下がる。ある意味、老化はすすんでしまう。

小迎 ちょうど更年期にさしかかってもいるので、イライラが続いたり、仕事の意欲がなくなったり。もしかして……と思うこともあるんですよね。

小山 小迎さんの場合、月経がないわけですから、閉経かどうかは血液検査が必要です。エストロゲンの値と、エストロゲンが減っているからもっと出せと刺激するFSHというホルモン値とを測って、そろそろ閉経となったら、更年期治療を始めればいいですね。

越川 子宮がないということは、体がんのリスクはゼロですから、ホルモン補充療法(HRT)など更年期治療に入りやすいというメリットもありますね。

小山 そのとおりです。ちょうど、小迎さんの血液検査の結果も出たので、見てみましょうか。

小迎 どきどきです。

小山 E2(エストラジオール)は182pg/mLと高いし、FSHは2.1mIU/mLと低い。まだ閉経ではありませんね。骨量も132%と充分!

小迎 骨も? それはうれしいです。

不正出血で考えられる原因。スクリーニング検査で器質性出血の疑いがなければ、機能性出血の治療に入る。

越川 では、更年期治療はまだ先ですね。私は、大変な出血体験の後、閉経前からHRTを始めました。

小迎 越川さんは、たしか月経が3カ月間も続いたんですよね。

越川 そうなんです。50歳だったので、1カ月くらい月経が続いても、更年期で乱れているのだろうとたかをくくっていた。2カ月目には、へんだな、止まらない。いよいよ3カ月目に入ったら、これは子宮体がんかもしれないと。

小迎 検査する前に思い込んだ。

越川 そう。婦人科に行ったら、内診せずに、ホルモン剤を出され、出血が止まったら来てくださいと。私は、そんな悠長なことは言ってられない。

小迎 3カ月放っておいたのに(笑)。

越川 そう(笑)。でも、突然怖くなって。すぐに、がん専門病院に行きました。そこで、細胞診と組織診をしてもらったんです。

小山 結果は、体がんではなかった。

越川 はい、その後、あらためて更年期外来を受診したんです。

小山 結果オーライですが、3カ月も放っておくのは感心しない。2週間続いたら、行くべきでしたね。また、覚えておいてほしいのですが、医師は出血しているときに診るのが基本です。なぜなら、妊娠に気づかず流産していたり、子宮腔内に病変があったり、出血部位が腟ではない場合もあるからなんです。

小山嵩夫クリニック院長、産婦人科医 小山嵩夫さん。異変があったら、すぐに専門家へ。ためらうことはない。

(ここで、女性カメラマンMが「実は、私も大量出血体験者」と話に参加)

M 8年前、夜に急にお腹が痛くなって、今までにない痛みだったのですが、翌日は少し軽くなっていたので、病院には行かなかったんです。

小迎 様子を見たんですね。

M しばらくして、黄色いおりものが続いて、次の月経にはひどい出血量。1つ目の病院では、出血が止まってからまた診ましょうと帰されたのですが、別の病院では、内診してすぐに「これは粘膜下筋腫で手術」だと。今は経過もよくて、出産も大丈夫と言われていますが、本当につらかったですね。座ると出血が怖くて、どこでも立っていましたし、おむつ型のナプキンを初めて体験しました。

小山 大変でしたね。有茎性粘膜下筋腫は、出血量が多いのが特徴です。また、子宮口から筋腫が出てくるものを筋腫分娩と言っています。子宮口というのは、通常、ペンの先くらいの大きさしかない。そこから3cmの筋腫が出てくるというのは、出産に近い痛みを経験してしまったんですね。

M 本当に婦人科系の問題なのか。第一、どの婦人科に行けばいいのか。すごく不安でした。

不正出血の診断の流れ。最終月経から1年たって閉経と判断する。気づかずに妊娠している場合もあるので、さまざまなスクリーニングをして出血の原因を探っていくことになる。作成:小山嵩夫
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