内山 女性は夜型の人は夜型のまま行くんです。それに多忙なスケジュールの中でも、ちゃんと睡眠がとれていますよね。世界中の健康な人の睡眠時間を調べた研究では、15歳で8時間、25歳7時間、45歳6・5時間、65歳6時間と、年をとるにつれて減ってくることがわかっています。光浦さんの6時間半弱はよいと思いますよ。
光浦 安心しました。睡眠にはイマイチ自信がないんですよね。
内山 「7時間が長生きの睡眠時間」とは言われていますが、年齢や一日の活動量などによって個人差があるので数値にとらわれないことも大切です。自分の睡眠が足りているかどうかは、日中に眠気があるかないかが目安になります。それに、もし睡眠不足なら昼寝して補うのも有効ですからね。
光浦 よかった! 睡眠日誌を書いた週はあまり昼寝がありませんけど、ほぼ毎日仕事が終わったら1時間ぐらい昼寝していますが、すっきりします。でもよく午後10時から午前2時までが成長ホルモンの出るゴールデンタイムって言われますよね。私は信じていませんけど、本当ですか?
内山 医学的根拠はまったくありません。成長ホルモンは眠り始めの2〜3時間に起きる深いノンレム睡眠で分泌されるんです。
光浦 何時に寝てもOKだったんだ。
内山 ただし、何時に寝ても関係ないとは言えないんです。睡眠覚醒のリズムを作っているのは体内時計で、およそ24時間をコツコツ刻んでいるんですが、朝の光を浴びないと1時間弱遅れてしまうんですね。
光浦 起きてすぐに光を浴びないと、体内時計がズレてくるということですか?
内山 それも強い光じゃないとダメなんです。太陽光は窓辺で大体3000ルクスあります。東京ドームの投手のマウンドが2500ルクス。人間の脳が昼間だと判断するのはこの明るさからなんですね。屋内だとリビングルームが200、オフィスが500〜600ルクスで全然足りていません。
光浦 起きたらカーテンを開けて、窓辺で太陽の光を浴びないとダメなんですね?
内山 朝、太陽光を浴びることで体内時計がリセットされて、一定のリズムを刻むことができるんです。ですから毎日決まった時間に起きることが大切ですね。
光浦 私は起きる時間はほぼ決まっていて、目覚ましで起きるようにしています。夜はスタジオ収録なんですけど、ライトがめちゃめちゃ明るいんです。
内山 そのスタジオの明るい光がプラスに働いているんです。光浦さんが普通の光環境で生活していたら、昼頃に起きて6〜7時間後には日没なので、北欧の冬の一日と同程度の日照時間になります。そうすると睡眠がやや浅く長くなるか、身体が甘いものと炭水化物を欲するようになるんです。そういう調節機能が身体にはあるんですよ。
光浦 光って大事なんですね。テレビとか家の照明の光とかはどうなんですか?
内山 スタジオの光くらい強烈じゃないと全然影響しません。
光浦 でも明るいとぐっすり眠れないから、電気を消せとか、間接照明がいいとかってよく言われるんですけど。
内山 ただ、そもそも人間は生き物のなかでは最も光に鈍感なほうなんです。敏感だったら、電灯をつけて夜も明るく暮らしていると体調を崩します。光に鈍感だから人間は文明生活を営めるんですね。要は自分にとって心地よいことを追求すればいいんです。睡眠がなぜ大切かと言ったら、翌日仕事をしたり、楽しく暮らすためなんです。あとは長期的な身体の健康、心の健康のために必要なので、眠り自体は生きていく最終目標ではありません。脳と身体を休息させるための仕組みなんですよ。
光浦 眠れないからと、眠りを生活の中心に考えてしまうのは本末転倒ということなんですね。