からだ

光浦靖子さんが睡眠学のドクターに相談。ぐっすり眠るための条件とは?

  • 撮影・岩本慶三 文・一澤ひらり

50代を過ぎたら、夫は夫、妻は妻。 別々に就寝するのが夫婦安眠の極意。

最高の眠りはオーダーメイド。心地よい眠り方を追求しましょう。(内山さん)
楽しく暮らすための基本が睡眠。生活の中心ではないんですね。(光浦さん)

内山 50〜60代の女性で不眠を訴える方が増えてきています。子どもは独立して夫婦生活は安定、ストレスになることは何もないのに眠れないと。よくよく話を聞くと夫が朝型化して早く寝るようになったので、それにつきあって早めに床に入るけれど、寝つけないということなんですね。

光浦 夫の朝型化、ですか?

内山 男性のみ40代後半から50代にかけて、体内時計による睡眠のコントロールが変わってきて朝型化するんです。夜は早く眠くなり朝早く目が覚める。老化現象なんですが、女性は10年以上遅いんです。僕も50代ぐらいから朝のほうが強くなって、ときどき夜10時ごろに寝て夜中の3時に起きて、6時まで集中して原稿を書いたりしてるんですよ。昔だったら考えられません。

光浦 まあ、先生、早く帰ってお休みにならないと(笑)。つまり50代以降の夫婦だと、夫は夜早くから眠いのに妻は眠くないというズレが生じてくるんですね。

内山 それで妻が夫に無理に合わせようとするから不眠になる。寝入りばなの夫のいびきも気になるみたいですしね。しかも暗い寝室で寝つけないでいると取り越し苦労の心配事が浮かんで、ますます眠れない。この解決策は簡単で、夫は夫、妻は妻で寝る時間を別にして、妻は元の就寝時間に戻せばいいんです。眠くなってから寝るようにすれば、不眠は解消されます。

光浦 年齢とともに男女で睡眠が違ってくるなんて驚きました。その違いをお互いが受け入れて生活していくっていう、相手への思いやりが必要なんですね。

内山 そのとおりです。睡眠不足や不眠が重なると血糖値のコントロールが悪くなったり、血圧が高くなりがちになります。不眠がある人はそうでない人に比べて高血圧の発症リスクは約2倍、糖尿病は2〜3倍、うつ病は2倍になるというデータもあります。不眠に悩んでいる方は専門医に相談してほしいですが、朝、ほどほどに気持ちよく目覚めることができて、日中の生活に支障がなければ充分によい眠りなんですよ。ゆったり構えてほしいと思います。

光浦 本当に眠りはおおらかでありたいですよね。そのためには日頃、どんなことに気をつければいいでしょうか。

内山 就寝時間は日によってまちまちでも、起きる時間を崩さないことですね。朝は太陽の光をちゃんと浴びて、夜は早めにではなく、眠くなってから床につく。でも寝つけずにいたらいったん床から出て、室内を明るくして本を読んだり、音楽を聴いたりして眠くなるまでリラックスして過ごす。睡眠環境で言えば、眠るのに必要なのは室温よりも寝具内温度、パジャマと肌の間の温度です。これをほどよくするのが効果的です。

光浦 私がいまお気に入りなのはシルクの長袖とズボンのパジャマで、しかもノーパン(笑)。ゆるゆるしていたいんですよね。

内山 いいじゃないですか。快適なのが一番。寝室はエアコンで春ぐらいの温度設定にして、布団をちゃんとかけて眠る。春って過ごしやすいでしょ。気持ちよく眠れて、幸せな目覚めになると思います。

光浦 ちょっと眠りに疑心暗鬼になってましたが、自分に快適な寝方をしていればいいんですね。今日は心地よく眠れそうです。

光浦靖子(みつうら・やすこ)●タレント。タレント活動だけでなく、手芸家として作品集も刊行。最新刊に『ハタからみると、凪日記』(毎日新聞出版)。

内山 真(うちやま・まこと)●日本大学医学部精神医学系 主任教授。日本睡眠学会理事長。著書に『眠りの新常識』(KADOKAWA)、『睡眠のはなし』(中公新書)など。

『クロワッサン』977号より

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