からだ

【後編】お腹の膨張が解消する腹ペタ呼吸法。

下腹ポッコリに悩んでいた山口恵以子さん。呼吸整体師・森田愛子さんが提唱する、腹ペタ呼吸法を実践したところ、お腹周りがスッキリに!
  • 撮影・岩本慶三 ヘア&メイク・高松由佳 文・板倉ミキコ

腹ペタ呼吸法を続けること3週間。期間中、会食が重なったり、雑誌の食レポート企画で美食三昧になるなど、食事制限は一切できなかったという山口さん。呼吸法のおかげで体が楽になったことは実感したが、サイズダウンしているかは甚だ疑問、と不安な面持ちでスタジオに登場した。

森田 山口さん、顔周りがスッキリ! 体全体もコンパクトになっていますから、お腹の悪いクセがだいぶ抜けた証拠ですね。

山口 そうでしょうか……。暴飲暴食の日も多かったので、自分では外見的な変化がわからないんですよ。でも、これまで無意識にしていた呼吸や、力みグセを気にするようになって、日常生活でいかに息を止めて行動をしていたか、呼吸がきちんとできていなかったかを実感できました。布団に入っても肩が力んでいるのに気づいたり。そうやって普段、無駄な力みがいかに多いかを意識できたのは、これからの人生にとって収穫でした。だって若い頃の〝これから〟と、60代を目前とした〝これから〟とでは、体への影響が全然違いますからね。

森田 この呼吸法ではご自身でクセに気づくことを一番大事にしています。自分の力で、無理のない深い呼吸と楽な体の使い方を身につければ、必ず体は変わるんです。

山口 つい先日、数週間ぶりに整体院に行ったら、「ガチガチだった肩が少し軟らかくなってますね」って言われたんです。この呼吸法の話をすると「それは絶対によいと思います。とにかく〝継続は力なり〟です。無理なことは続きませんが、その体操が無理じゃなければぜひ続けてください」と。

森田 うれしいお話ですね。呼吸やお腹のクセを直す、といっても難しいことは提唱していないんです。息をしっかり吸えて、しっかり吐けるか。そして日々、些細な行動で力んでいないかどうかに気づいてもらえばいいんです。でも、そこが本当に重要で、全身の肝であるお腹がちゃんと使えていないと、体質や体調に影響しますからね。

山口 整体の先生も、施術のとき「お腹を触るとその人の体の状態がよくわかるから」と、お腹の触診を念入りにしてますけど。今回、腹ペタ呼吸法で自分のお腹がカチカチだったことがわかり、なるほど、お腹が大切ってこういうことだったのか、とよくわかりました。でも、何十年も身につけてしまったクセだから、すぐ直そうと思ってもそれは難しいはずですよね。ただ、気づくことは本当に大事。「あ、また力んでる」「呼吸が浅いな」と感じるたび、プシューッと体の圧を抜くことができました。

森田 食いしばりも、背中の硬直もだいぶなくなってますよ。では、実際のウエストや腰回りサイズを測ってみましょう。

山口 え〜っ!? ウエストマイナス4㎝?ジムにも行かず、食事制限もしなかったのに、呼吸法だけでこんな成果が出るなんて、本当に素晴らしい!

森田 それだけ、私たちの体に呼吸が大事だということなんですよ。今の状態を習慣にしていけば、サイズだけでなく、頭痛やめまいなどの不調も改善されるはずです。

山口 それは願ったり叶ったり。特に朝行う森田式丹田呼吸や足壁は、頭もすっきりして気持ちへの効果も大きいので、運動が面倒と思う私でも絶対に続けられます。

楽な呼吸を身につければ、更年期や閉経後も不調知らず。

森田 実はこの呼吸法は、更年期や閉経後の女性にとてもオススメなんです。更年期は子宮環境が大きく揺れ動き、不安定になるので、過剰な緊張をもたらします。また、生理がこなくなるということは〝月に一度の排出〟という、ずっと行われてきた体内の循環も途絶えてしまうわけです。この時期、骨盤環境は大きく変化するので、それを安定させるためにも、お腹の悪いクセを取り除いておく必要があるんです。

山口 なるほど。それまで強制排出してくれていた働きがなくなるから、排出しやすい環境になるよう、お腹周りは緩めておかないといけないんですね。私も、更年期は頭痛やめまいがひどかったですが、あれも巡りの悪さが影響していたんですね。

森田 閉経後、50代以降に脚の重さやだるさが気になったり、膝や股関節を痛める人が多いのも、下半身が滞りやすくなるからです。でも、閉経はマイナスばかりではありませんよ。閉経することによって、やっと体は安定すると捉えることもできます。そのためには無駄な力みをなくし、深い呼吸を身につけて、体の土台となるお腹を楽に上手に使えるようになること。私は、呼吸は排泄器官と同様に考えています。慢性疲労、慢性不調の解消には、しっかり吸ってしっかり吐くことが大事なんです。

山口 60歳を目前にしたこのタイミングで、とても大切なお話を伺えました。更年期から向老期は、安定に向けての建設途上期のようなものですね。呼吸を軸に、自分の体とちゃんと付き合っていきたいです。

【after】肩の余計な力が抜け、 背骨の硬直もなくなった。肘や手が軽く曲がった、 自然な姿勢を キープできるように。足指の力みが取れ、 足裏全体で 地面をつかんでいる。
【before】
【after】食いしばりのクセがなくなり、 顎のラインがスッキリ。浮き輪のような肉が減り、 ウエストラインがシャープに。お尻の力みがなくなり、 股関節のロックが外れた。
【before】
【after】山口さん自身は気づいていなかったけど、腰回りだけで なく、背中周辺も無駄な肉が消え、全身ほっそり。

運動も食事制限もせず、 ここまで成果が出ることに驚き。

今回は雑誌の食レポの仕事が重なって、食事制限はまったく出来なかった。これではサイズダウンは無理だろうと半ば諦めていたので、結果には本当に驚いた。万歳! そして、自分がいかに無駄に力んでいたか、浅い呼吸をしていたかも痛感させられた。

呼吸は毎日、一生涯続く。良い呼吸をすることでこれからの十年、二十年が変わると思う。すでに閉経期を過ぎて老年期に向っている身に、強い味方を得た思いだ。ネガティブにとらえられることの多い時期だが、見方を変えれば変動期を過ぎて安定に向っている。破壊が終わって建設の時期に入ったのだ。

良い呼吸で身体に良い状態を作れるのでは? 前回の糖質制限も含めて、健康に良いことが美容にも良いのだと感じ入った。

文・山口恵以子

『クロワッサン』952号より

●山口恵以子さん 作家/2013年『月下上海』で松本清張賞を受賞。近著に『恋するハンバーグ 食堂のおばちゃん2』(ハルキ文庫)が。

●森田愛子さん 呼吸整体師/〝呼吸で体を育て直す〞をコンセプトに活動を続ける。渋谷鍼灸理学治療室「K-Raku Style」を運営。近著に『奇跡の3日腹ペタ』(ワニブックス)が。

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