【ヨガのポーズ78】“塩梅”が肝心な押し引きのポーズ——Dr.高尾美穂のカラダとココロの整え方
押したり引いたりして、バランスのいい地点を見つけよう。──心の中で異なる考えに葛藤したり、現実社会で誰かと対立したりするとき、0か100かではなく、上手に落としどころを見つけられるといいですね。
撮影・森山祐子 イラストレーション・SHOKO TAKAHASHI 構成&文・越川典子
押し引きのポーズ
腰を時計回りにひねる感じ
まっすぐに立ち、右足を前に出し、両手を伸ばしながら上体を倒します。同時に、右腰を引き、左腰を前に押し出すようにバランスをとります(腰を時計回りにひねるイメージ)。深い呼吸を続けながら8秒。足を替えて反対側も同じように行います。
このポーズ、一見とても簡単そうに見えませんか? 実は、ヨガ指導をしている私にとっても、かなり難易度が高いのです。ただ両脚を前後に開いているように見えるかもしれませんが、実は右の腰をぐっと後ろに引いています。反対に、左の腰はぐっと前へ押している──押し引きの、究極のバランス。試してみてください。むちゃくちゃキツイ体勢だとわかります。
このポーズを通して、皆さんにお伝えしたいのは、サンスクリット語で「タパス=自己鍛錬」のことです。
ヨガには八支則(はっしそく)という教えがあり、タパスは、「ニヤマ=したほうがよいこと」の一つで、「ヤマ=しないほうがよいこと」の一つである「アヒムサ=非暴力」と相対する言葉になっています。暴力的なことを避けること、そのために必要な鍛錬──。このように対のように対峙する2つの概念は、いつでも、誰の心にもあるものです。それらを押したり引いたりしてニュートラルなバランスをとる。日本語でいう「いい塩梅」に保つことは難しく、自己鍛錬なくては到達できません。
コミュニケーションのスタイルでも、相手も自分も尊重して関係を作るアサーティブという態度があります。何ごとか起きても冷静に対処できる「いい塩梅」に心身を保つことは、人生、生きやすく生きるためのよい方法です。
『クロワッサン』1145号より
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