スパイスの基礎知識と、夏におすすめの8つのスパイスの効果や特徴。
撮影・土佐麻理子 イラストレーション・タムラフキコ 文・小沢緑子
スパイスを使いこなす基礎知識。
「スパイスにはフレッシュ(生)とドライ(乾燥)がありますが、手に入りやすいドライを選ぶのが一般的。香りが凝縮していて、手軽に使えるのがメリットです。ほんのひと振りで味わいが変わるのを楽しんで」(大平美弥さん)
選び方
購入する際、ホールかパウダーのどちらを選ぶか。「それぞれに利点(左記)がありますが、ホールならではの自分で挽き、挽きたての香りと味を楽しむ醍醐味は一度味わってほしい。平日はすぐ使えるパウダー、ゆっくり料理できる週末はホール、という使い分けもおすすめ」
●パウダー
香り、色が早く出る
食材になじみやすい
ちょい足ししやすい
●ホール
フレッシュさが味わえる
スパイス本来の香りが楽しめる
料理の楽しみがより広がる
保存方法
できるだけ香りよく、長く保存したいもの。「保存する際は、酸化や劣化につながる高温多湿、直射日光は避けます。入れ替えるときは、空気を抜きながら保存袋に入れるか、蓋がロックできる密閉瓶に。引き出しや蓋付きのケース等に入れて常温で保存します」
●密閉できる袋か瓶で保存。
●直射日光から守る場所で。
使い方
ホールスパイスの香りを引き出すために、ミルで挽く以外にこんな方法も。「麺棒などで『潰す』のもあり。また、香り成分は熱で変化するので『から煎り』したり、油やお酒に溶け込みやすいので『テンパリング』『抽出』するのも、スパイスの使い方を広げてくれます」
【テンパリング】
「フライパンにサラダ油とスパイスを入れて中火で熱し、スパイスの周りに小さな泡が立ってきたらすぐ火を止めます。焦げると香りも風味も飛んでしまうので注意を」。炒め油や煮物の香り付けに使ったり、スパイスカレーのスターターにしても。
【から煎り】
フライパンにスパイスを入れ、中火で軽く煎る。「香りがしてきたらすぐ火を止めます。スパイスの温度が上がることで香りが活性化し、香ばしさも加わります。ピクルスなどの酢漬けやソースを作るときに使うのがおすすめ」
【潰す】
ミルを利用する以外にも、手持ちの麺棒や空き瓶の底などを使えば簡単。「キッチンペーパーの上にホールスパイスをのせ、滑り止めのラップをかぶせてから潰しましょう。均一でなくても、ラフにザクザクと砕くだけで香りは引き出されます」
【抽出】
酒にスパイスを入れて香りを抽出する。写真は料理酒にクミンを入れて(料理酒2:クミン1の割合)置いたもの。「和食の風味付けに使えます。ほかにも中華なら紹興酒+スターアニス、洋風ならホワイトリカー+ローレルの組み合わせもいい」
夏におすすめの8スパイス
●ターメリック
高い抗酸化力で美容効果も期待。
◎特徴
ウコンの根茎を乾燥させたもの。黄色の色素成分はポリフェノールの一種クルクミン。食欲増進ほか、強力な抗酸化作用で、近年美白など美容効果も期待される。
◎使い方
鮮やかな黄色で天然着色料として多用され、特にカレーの色付けに欠かせない。辛みはなく、ほろ苦さがある。「日差しが強い夏におすすめ。気軽に使うなら、じゃがいもなどの野菜に塩と一緒に加えて炒め煮にしたインド風サブジ、マヨネーズに混ぜて簡単エスニックディップに」
●ガーリック
夏に大活躍の万能スパイス。
◎特徴
古代からスタミナアップ源として重宝されるほか、抗菌、健胃作用も。刺激的な香りの元はアリシン。切ったりおろしたりして、細胞が壊れると発生。
◎使い方
料理に少量加えるだけで、パンチの効いた味になる万能スパイス。「夏はガーリックが効いた味が欲しくなるもの。生はもちろん、乾燥・粉末にしたパウダータイプも便利。食材にひと振りするだけで下味付け、肉や魚の臭み消し、料理のコク出しもできるので、時短に役立ちます」
●レッドペッパー
普段便利なホール〜細挽き。
◎特徴
赤唐辛子の実を乾燥させたもの。スパイスの中で最も辛く、その刺激的な味は主に辛味成分カプサイシンによる。胃腸を整えたり、食欲増進作用が。
◎使い方
ホール、粗挽き、細挽き、粉末があり、粒子が細かくなるほど、舌への刺激が強く辛く感じる。「粉末はスパイスカレー向き。普段は辛さがマイルドでピリ辛が楽しめる、ホール〜細挽きが使いやすいです。塩もみしたきゅうりにごま油と一緒に和えるのもおすすめ」
●ブラックペッパー
刺激的な〝スパイスの王様“。
◎特徴
熟す前の実を摘み、香味成分が多い外皮を除かずに乾燥させたもの。爽やかな香りと辛みの刺激には発汗、新陳代謝を促して血流をよくする作用も。
◎使い方
ピリリと刺激的な香りと味で世界中で親しまれるスパイスの王様。ホール〜粉末タイプまで、料理のジャンルを問わず、辛みや風味付けなど幅広く使える。「意外なところではバニラアイスや輪切りにしたバナナにはちみつと一緒に振ったり。大人味に引き締めてくれます」
●クミン
和食のいいアクセントにも。
◎特徴
スパイスとして使用するのはクミンの種子。エキゾチックな強い香りと辛みと苦み。食欲が湧かないときも胃腸の働きを整えて消化を助けるほか、整腸作用も。
◎使い方
カレーに使われる主要スパイスで、臭み消し、香り付けなど、料理にエスニックな風味を加えたいときに。「オクラなどの野菜と一緒に炒めても。意外に和食とも合い、きんぴらごぼうを作るときに種子のまま、料理酒で抽出したものを加えると新鮮なアクセントに」
●コリアンダー
爽やかでエスニックな香り。
◎特徴
コリアンダー(別名パクチー、香菜)の完熟した種子を乾燥させたもの。甘く爽やかな香り。消化不良の改善、腸内のガスを出しやすくする作用も。
◎使い方
エスニック料理に多用される。「特に肉料理との相性が抜群。粗挽きタイプは、肉の下味として振ると風味がアップ。粉末はスパイスカレーで使用するのが定番。酢やお酒とも相性がよく、酢漬けを作るときにホールを潰して調味液に加えたり、カクテルに加えても香りが立ちます」
●カルダモン
甘く香る〝スパイスの女王“。
◎特徴
さやの中にある種子に強い香りがあり、ホールタイプは切り込みを入れたり、種を取り出して使う。古くから健胃作用、口臭予防効果も知られている。
◎使い方
爽快感のある甘くスパイシーな香りで、スパイスの女王と呼ばれる。カレー粉の主原料のほか、肉や魚の香り付けにも。「甘い香りはフルーツ、特に柑橘のオレンジ風味と合います。オレンジジュースに混ぜてホタテなど魚介のドレッシング、煮詰めて魚のソースにするのもおすすめ」
●シナモン
柑橘系フルーツとも好相性。
◎特徴
肉桂の樹皮を乾燥させた世界最古のスパイス。古代エジプトではミイラの防腐剤に使用されたという。抗菌・防腐のほか、健胃、血の巡りをよくする作用も。
◎使い方
スティック、粉末タイプがあり、甘さと辛さがミックスする香りはお菓子やパン、コーヒーや紅茶などドリンクの香り付けに好まれる。「果物とも相性がよいので、料理に使うならフルーツサラダのドレッシングに混ぜたり、豚の角煮やかぼちゃの煮物の隠し味として少量加えても」
『クロワッサン』1122号より