休んでも疲れが抜けません……それって、もしや副腎疲労? 症状チェックと自分でできる対策。
忙しい女性なら誰もがケアすべきこの病気を、5つのコラムと対策で解明します。
イラストレーション・大石さちよ 構成&文・堀越和幸
夏を前にしてここのところ何だかだるい、ちゃんと睡眠もとっているはずなのに疲れが取れない。これってもしや、すでに夏バテが始まっている?
そんなことを感じる人がいたら、一度、副腎疲労を疑ってみるといいかもしれません、と言うのは明治国際医療大学の伊藤和憲さんだ。
「慢性的な体の疲労感だけでなく、やる気が出なかったり、気分が落ち込んだりと精神面にも悪影響を及ぼすので注意が必要です」(伊藤さん)
例えば夏休みの計画。本来ならワクワクしながら考えるはずなのに、億劫と感じるのなら、それは副腎疲労かも。
[症状、原因を理解して、副腎疲労の正体に迫る。]
1.副腎疲労って何?
副腎疲労を語る前に、副腎とはどんな働きをする臓器か?
「左右の腎臓の上にある、三角形の小さな臓器で、ここからいろいろなホルモンが合成、分泌されます」(伊藤さん)
塩分や水分を調節するアルドステロン、性ホルモンとなるDHEA……。
「中でもコルチゾールという抗ストレスホルモンの働きが重要です」
コルチゾールはストレスを感じた時に分泌されるホルモンで、交感神経を刺激し、血圧や血糖値を上げる。
「適正に働いているうちはいいのですが、ストレスが慢性的になると分泌が過剰になり、やがて副腎は疲労します」
2.具体的にはどんな症状?
副腎疲労の特徴としては、まずは体が疲れやすくなるということ。
「土日をしっかり休んだつもりなのにどうにもだるい、と感じる人はその傾向が強いと言えます」
先に述べたように、副腎疲労は精神的な疲労も伴って発症することが多い。純粋な肉体疲労とはそこが違う。
「一つの目安として、変化を求めるのが億劫になったら要注意です」
例えばおしゃれに興味がなくなる、家族で行う行事が面倒になる……。
「夏休みの計画もそうでしょう。左に挙げた代表的な症状と照らし合わせて、一度自分を振り返ってみましょう」
●こんな症状があったら注意!
□ 疲労感が強く、活動するのが億劫だ。
□ 睡眠をとっているはずなのに眠い。
□ イライラしやすい。
□ 記憶力や集中力が低下している。
□ すぐに甘いものが欲しくなる。
□ 気分が落ち込みやすく、やる気が起きない。
□ 花粉症やアレルギーがひどくなっている。
□ 最近、性欲がない。
3.なぜ起きるの?
副腎疲労の3つの大きな原因は過剰なストレス、睡眠不足、栄養不足とされる。ストレスと聞けば、つい精神面のことばかりに目を向けがちだが。
「それにプラス、外的なストレスが加わるとダブルパンチになるので気をつけてください。外的なものとは例えば寒暖差のようなストレスです」
夏本番を迎えれば、あの蒸し暑い屋外とキンキンに冷えた部屋との行き来をまた繰り返さなければならない。日頃から忙しい人は特に注意が必要だ。
副腎に必要な栄養としてはビタミンCやB、マグネシウムが挙げられる。
「とりわけ副腎のビタミンCは人体の中でも高濃度で、減少するとコルチゾールが充分に作られなくなります」
が、過剰摂取がいいとは限らない。
「一時しのぎにしかなりません。最終的にはやっぱりバランスのいい食事が大切になってきます」
4.放っておくとどうなる?
副腎疲労を放っておくと、疲労感だけではない、内臓機能の低下や生活習慣病に発展していくという。
「気分の落ち込みは最終的にはうつ病にもつながるので、そのままにしないで早めのケアが大切です」
さらにはコルチゾールの過剰分泌が慢性化すれば、老化を早める原因にもなる。下の模式図を見てみよう。
「副腎皮質から産生されるプレグネノロンは、コルチゾールと前述した性ホルモンDHEAの前駆体で、両者は拮抗関係にあります。DHEAは“若返りホルモン”とも呼ばれ、コルチゾールが生み出す活性酸素から細胞を守る働きがあります。しかし、コルチゾールが過剰に分泌されると、その分DHEAの作られる量が減ってしまうのです」
日々のイライラが募るほど若返りホルモンは出番が少なくなるーー。そう覚えておこう。
5.こんな⼈がなりやすい?
疲れたらとにかく休む。それができない人が実は副腎疲労になりやすい。
「ストレスを過剰に感じればコルチゾールが過剰に分泌する。こればかりは精神論ではどうにもなりません。休む自分を許してあげましょう」
また伊藤さんによれば、副腎疲労になりやすい人は姿勢にも表れるという。
「猫背の人も気をつけてください」
どうしてか?
「姿勢は抗重力筋と呼ばれる筋肉で支えられています。代表的なところでは、胸や肩や首周りの筋肉がそれに当たりますが、この部分が硬く縮むと交感神経が亢進してしまいます。いわゆる前屈みのファイティングポーズの状態になるわけです」
猫背はそれに似ている、ということ。
「猫背だと体が緊張状態にあると脳が錯覚して、交感神経を刺激しやすい」
それが副腎疲労につながっていく。