からだ

白内障、緑内障、黄斑変性…加齢によりリスクが高まる目の疾患とは?

多くの情報が得られる視覚。
長く付き合う秘訣を専門家に聞きました。
  • イラストレーション・山本由実 構成&文・中條裕子

長くクリアな生活を送るため、目のケア。

こんなことありませんか?

□ ものがゆがんで見える
□ 視力が低下している
□ 色の区別がつきにくい

「私たちの情報の80%は視覚から得られているとされています。日常生活において、見ること、すなわち視覚は周囲の情報を得る重要な手段。仕事、趣味、友人とのコミュニケーションをとるといった場面でも欠かせません」

と、見ることの大切さを改めて考えてほしいと語るのは、白内障、屈折矯正手術を専門とする眼科医のビッセン宮島弘子さん。年齢とともに出やすい目の病気について知っておき、日頃から見え方をチェックすることで、早めに専門医の診断を受けて治療ができる場合があるという。

「見えにくくなっても、年齢のせいと思って放置せずに、気づいた時点で眼科を受診することをおすすめします」

失明につながってしまう緑内障は早期発見が大切に。

視野がだんだんと欠けていき、見えない部分が多くなっていく緑内障。失明に至ることもあるので注意が必要なのだが、進行がゆったりしているため、すぐには気づかないのもこの病気の恐ろしいところ。

「緑内障は目から入った情報を脳に伝達する視神経が、耐えうる眼圧を超えた状況が続くと障害を受けて発症する病気。以前は、眼圧が高い人が発症するとされていましたが、眼圧が正常範囲であっても生じる正常眼圧緑内障が日本人の緑内障の半分以上を占めるとされています」

たとえ視神経が障害を受けても、すぐに視力が低下するわけではなく、最初は見える範囲(視野)が一部欠けるだけ。その範囲を拡大させないためには、いかに早めに気づくかが必要となってくる。日頃から本や雑誌を読む際に片方の目をつむって、見えにくいところがあるか?をこまめに確認するよう心がけて。

「視野の中央が見えない、視力が低下したと気づくころには、緑内障がかなり進行している状態。予防法はなく、早期発見もなかなか難しいので、下の図を使ってセルフチェックをしつつ、年に1回は眼科で定期検査を受けることをおすすめします」

30cmほど離して片目ずつマス目の中心を見た時に、一部が欠けて見える、ぼやけて見えるなどがある場合は要注意。歪んで見える時には黄斑変性の可能性も。

眼科では、眼圧や視神経の状態を調べて、緑内障になりやすい人を見つけることもできる。そのように診断された際には、主に点眼で眼圧を下げる治療を受けることに。それでも下がらない場合には、レーザーや手術で眼圧を下げるという方法も。いずれ早期発見が進行を防ぐ鍵に。

緑内障の場合、最初は鼻側の上の部分が一部欠けて見えにくくなることが多い。両目だと気づきにくいので、片目ずつ試してみて。

年齢を重ねるほどだんだんと発症率が高くなる、白内障とは?

なんだか以前より見えにくい……そんな場合にまず疑うべきは白内障。年齢を重ねるほど発症率は高くなり、70代で50%、80代ではほとんどの人に見られるのだという。

「白内障は目の中の水晶体が濁る病気で、その原因のほとんどは加齢による水晶体のタンパク変性とされています。若い人でもアトピー性皮膚炎や目の外傷を受けた場合に発症することがあります」

下にあるチェック事項の症状がある場合は、まずは眼科の受診を。いったん濁った水晶体を透明に戻す方法はなく、治療の手段は手術となる。濁った水晶体を取り除き、新しい人工の眼内レンズを入れるのだが、多くの医療機関において現在は日帰りの手術が可能となっている。

「手術というと、受けることを躊躇してしまいますが、白内障手術は、眼内レンズを入れることで手術前の近視、遠視、乱視も一緒に治すことができます。さらに老視を治せる多焦点眼内レンズを用いると、ほとんど眼鏡が必要なくなります」

手術の時期は、生活に不自由がなければしばらく経過をみる場合もあり、希望によっては早めに受けることもできる。特別な予防法はないが、長時間の紫外線が原因になる場合があるので、そうした環境で仕事や生活することが多ければ、サングラスを使用するのもよい。

【check】
□ かすんで見える
□ 明るいところで眩しく感じる
□ ものが二重に見える
□ 眼鏡が合わなくなった

光が眩しく感じたり、ものが何重かにダブって見える、というのもサインのひとつ。気になったら、すぐに眼科で検査を受けてみて。

加齢による黄斑変性も、日頃からのケアとチェックを。

白内障、緑内障と並んで、加齢により罹患率が高まるのが黄斑変性。視力が低下する、中心がぼやける、ものが歪んで見えるといった症状が現れる。この黄斑変性には、2つのタイプがあるという。ものを見るのに重要な網膜の中心部分にあたる部分が加齢で萎縮するタイプと、正常な組織にはない新生血管が原因で生じるもの。いずれも、日頃は両目で見ているため片方の目が悪くなっていても気づかない場合が。

「チェックリストのような症状がないか、日頃から片目ずつ確認してみてください。もしも思い当たる場合は、眼科受診をおすすめします。眼科では眼底検査に加え、網膜光干渉断層計という装置で網膜の状態を断面で詳しく調べることができます」

治療の方法は、加齢による萎縮型、新生血管による滲出型、どちらによるものかによって異なる。萎縮型の場合は経過観察となるが、滲出型の場合、抗VEGF(血管内皮増殖因子)の硝子体への注射や、レーザーによる治療を行うことに。

「予防法としては、危険因子とされる喫煙、紫外線をまず避けること。また抗酸化ビタミンを含む食品やルテインを含む緑黄色野菜を取るなど食事にも気を配るとよいでしょう」

黄斑変性は、危険因子を遠ざけたり、食事で必要な栄養素を摂ることでリスクを下げることができる。加えて、日頃のセルフチェックと定期的な検診がやはり欠かせない。

【check】
□ ものがゆがんで見える
□ ものの中心が見えにくい、欠ける
□ 視力が低下している
□ 色の区別がつきにくい

黄斑変性も片側の目から症状が現れるため、気づきにくいことが。緑内障のセルフチェック用のマス目でも歪みなどを確認できる。
ビッセン宮島弘子

ビッセン宮島弘子 さん (ビッセンみやじま・ひろこ)

眼科医

東京歯科大学水道橋病院眼科名誉教授・特任教授。専門は白内障と屈折矯正手術。著書に『LASIK(レーシック)』『ウルトラ図解 白内障・緑内障』など。

『クロワッサン』1104号より

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