からだ

認知症予防に始めたい「家事」で脳トレ ! 脳の強化法「脳番地トレーニング」とは?

  • イラストレーション・オガワナホ 文・小沢緑子

今日から始める、家事で脳トレ!

[1.伝達系脳番地]

「一緒にしようよ」 と家族を家事に誘う。

「家事をひとりでこなしてきた人は、今後は夫や家族の認知症予防のためにも〝任せる〞ことをテーマに。言葉で的確に指示することが必要なので、伝達系脳番地が強化されます」。まずは「一緒にやろう」と誘いを。「人は一緒に、と言われると弱い。動いてくれる確率も上がります」

片づけてほしいとき、3つの案を伝える。

家族に片づけをしてほしいときは、具体案を3つ提示する手も。「脳は明確な選択肢を挙げたほうが、考えがまとまりやすくなります。例えば、散らかった服があったら『これは洗濯する? しまう? 捨てる?』と具体的に伝えましょう。相手も理解し、次の行動がしやすくなります」

買い物は、個人商店で会話しながら。

年齢が上がるにつれて行動範囲が次第に狭くなると、脳は一気に老け込む。「人と会話する機会がどんどん減るので、コミュニケーション力も低下します。日常の買い物もできるだけ人と直接言葉を交わしながら選べる店へ。普段から楽しみながら伝達系を強化しましょう」

地域の活動に参加してさまざまな人に会う。

バラエティに富んだ人間関係も大切。「自分と気の合う人とだけ付き合っていると、脳への刺激は少なくなります。その点、地域の活動やボランティアに参加すると、出会うのは年齢も立場も異なる人たち。さまざまな視点、意見に触れられる場は、伝達系脳番地を鍛えてくれます」

[2.感情系脳番地]

好きな音楽をかけて家事をする。

「人は楽しいと思うと自然に体が動きます。それは家事も同様。ずっと後回しにしていた片づけも、好きな音楽をかけながらだとすんなり終えられることが。事前に自分が楽しい気持ちになれるシチュエーションを整えておくことも、感情系脳番地をより働かせるコツです」

イヤなことがあっても、 五七五で笑い飛ばす。

「すぐカッとなる、急に気が変わるなど、自分の感情が抑えづらくなるのは、喜怒哀楽を司る感情系の働きが低下しているサインです。失敗したり腹が立ったときは、五七五の川柳や俳句にして笑い飛ばしましょう」。客観的に眺められるようになり、感情のコントロールが可能に。

子どもの頃の思い出の料理を再現。

〝懐かしさ〞も、感情系脳番地を大いに揺さぶる。「子どもの頃に母親に作ってもらった味や思い出の味を再現すると、懐かしさとともに、当時の感情まで鮮明によみがえってくることが。また、嗅覚を司る脳番地は感情系の近くにあるため、料理の香りも感情系を刺激します」

料理は〝推し”のため、と想像しながら。

「感情系脳番地が一番活性化するのは、ドキドキ、ワクワク〝ときめいているとき〞です。料理をするなら、好きな俳優やアイドルなどを思い浮かべて『彼のために』と妄想しながら作るのも一案」。〝推し〞のためなら献立も盛り付けもいつもよりひと工夫したくなるはず。

[3.運動系脳番地]

利き手と反対の手で拭き掃除。

運動時はもちろん、日常で体を動かすときに、さまざまな司令を出すのが運動系脳番地。「家事も、普段あまり使わない部位を意識的に使うと、運動系脳番地も鍛えられるもの」。たとえばテーブルや窓拭き、掃除機をかけるときなどに、利き手と反対側を使う。「さらに歌を口ずさみながら行うと難易度が上がります。脳により負荷がかかるので、より効果が期待できます」

片づけはゲーム感覚で。 床に落ちているものを数えながら拾う。

子どもと一緒に片づけをするときにおすすめできる、運動系脳番地トレーニング。「床に散らかっているものを宝物に見立てて、ひとつひとつ数えながらどれだけ早く片づけられるか競争を。腰をかがめながらモノをつかんで拾う行為は、かなりの運動量にもなります」。片づけが苦手な人も、「運動系脳番地を鍛えるチャンスだ」と思えば、ゲーム感覚で楽しく体を動かせる。

決めた時間内に買い物を終わらせる。

「運動系脳番地はほかの脳番地と連携させたり、さらに時間も制限すると可能な限り力を発揮しようとするもの」。たとえば、スーパーで買い物をする前に、「あの売り場に直行して、次はあのコーナーで」などと効率的なプランを立て、「10分で終わらせる」と決める。「すると、思考を司る脳番地が働き始め、運動系脳番地に命令を下すため、パフォーマンスもアップします」

[4.記憶系脳番地]

料理のレシピは目で追い、声に出しながら記憶する。

覚えたり思い出したりするときに働く記憶系脳番地。「年齢とともに低下していきますが、〝暗記〞をすることで記憶力の低下を食い止めることができます」。レシピを目で追いながら、声に出して記憶していくのがおすすめ。「目と耳の両方から脳にインプットできるので効果は大です」

梅干し、漬物、味噌など、 仕込みが必要な保存食作りに挑戦。

「記憶を司る器官の海馬は年齢とともに萎縮する傾向にあります。過去の記憶を繰り返し思い出して記憶の定着を」。役立つのが、仕込んだ後も何度も思い返して手を加える保存食作り。「その食品に関する記憶をずっと保つ必要があるため、海馬が鍛えられます」

野菜や花を育てる。

「〝時間〞を意識することは、記憶力アップのトレーニングに。先々の楽しみも加わると、脳はワクワクしてより活性化します」。野菜や花などの植物を種や苗から育てるのはよい方法。「収穫や開花を心待ちにしながら成長を見守ることは、時間の流れを実感できる機会になります」

片づけや掃除はタイマーをセットして。

「時間を気にしなくなると記憶力は衰えます。『今何時で、今日の予定はどのくらい進んだか』と、その都度時間を確認しながら行動すると記憶系脳番地のいい刺激に」。家事はタイマーをセット。「『あと5分、あと1分』と時間を気にかけながら行うと、脳内時計が磨かれます」

[5.視覚系脳番地]

ときにはほうきで掃除する。

目で見た情報を脳に伝える視覚系脳番地。「衰えると脳は見た情報を処理できず、目の前にあるものも『ない!』と探す状況が出てきます」。家事で鍛えるなら、掃除の際にほうきを使うのもよい。「掃除機を使うよりも、自分の目でホコリやゴミを見つけようと意識するので、じっくり見て観察するトレーニングになります」

買い物に行った店で、新商品や流行ものを積極的にチェック。

「好奇心が強い人が元気で若々しいのは、五感でさまざまな情報を吸収しているからです。買い物に出かけたら、目的のものだけでなく、ほかの商品も興味をもって眺めてみると、『今の流行りは?』『これが人気なんだ』などと、何か気づきや発見があるはず。「多くの情報に触れるほど、視覚系脳番地は活性化していきます」

3カ月に一度はプチ模様替え。

脳にとってマンネリは大敵。視覚系脳番地に刺激を与えるなら、定期的に小さく模様替えを。「模様替え自体、『部屋のどこを変えようか』と視覚をフルに使います。さらに見慣れた風景が少しでも変わると、人は無意識に目で追うもの。季節に合わせてテーブルクロスを替えるなど、簡単なことでかまいません」

日曜大工にチャレンジ。

「材料のサイズを測り、正確にカットし、位置がずれないように釘を打つなど、日曜大工は〝目で見て判断する〞視覚系脳番地を駆使します。さらに力の加減も必要なので、運動系脳番地、完成したら達成感から感情系脳番地も刺激」。複数の脳番地を一度に鍛えられるのでぜひトライを。

[6.思考系脳番地]

買い物をするときは暗算しながら。

「物事を考えたり、計算するときも働くのが思考系脳番地。たとえば買い物のとき、購入しながらひとつずつ暗算を。その日の予算も決めておけば、オーバーしないように数字も覚えておかないといけないので、記憶系も活性化します」

いつもと違う部屋から掃除をする。

「〝慣れ〞は、思考系脳番地を怠けさせてしまいます。掃除をするときは、時々掃除機をかける順番やルートを変更。たったそれだけのことでも、『こうしたらもっと掃除の効率がよくなる』など、思考系が働くようになります」

[7.理解系脳番地]

収納ルールを変えてみる。

物事を理解するときに働く理解系脳番地。「今まで服を色別に収納していたら、次は素材別、TPO別など、時々変更を。より便利な収納を工夫するためには今までの方法を客観視し分析する必要があるため、理解力が鍛えられます」

残り物で料理する。

「料理は脳番地を駆使する最高の脳トレですが、中でも理解系脳番地を磨けるのが、残り物での調理。限られた食材でどう工夫するか、今までの知識や経験を一瞬で分類、整理し、答えを導き出そうとするため、頭の中がフル回転します」

[8.聴覚系脳番地]

ラジオを聴きながら家事をする。

耳から得た情報を脳に伝えて理解するのが聴覚系脳番地の役割。「ラジオを聴きながら家事をすると一石二鳥。その際、聞こえてくる言葉を復唱したり真似したりすると、聴覚により意識を集中できるので〝聴く力〞が高まります」

加藤俊徳

加藤俊徳 さん (かとう・としのり)

加藤プラチナクリニック 院長

日米で最先端の脳医療と研究に携わり、脳の強化法を提唱。新刊は『発達凸凹子どもの見ている世界』(Gakken)。

『クロワッサン』1102号より

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