WHOも効果を認めた、ツボ刺激が腰痛を改善!
文・山下孝子 イラスト・宇和島太郎
体を巡る生命エネルギーの出入口が「ツボ」
東洋医学では人間の体には「気」「血」「津」という3つの構成要素があります。そして、人間の全身に張り巡らされた「経絡(けいらく)」というルートには、気と血が結びついた「気血」と呼ばれる生命エネルギーが通っており、そのバランスの乱れが体調不良を招くと考えられています。
全身に14本ある経絡の上には、約650以上の気血の出入口が点在しています。この出入口こそが、いわゆる「ツボ」です。
ツボを刺激することで気血の流れを整え、血行をよくして体調不良を改善させるツボ療法は、決して時代遅れの民間療法ではありません。なんと世界保健機関(WHO)もその効果を認めているのです。そのため、関係するツボを刺激することで、腰痛の予防や改善が期待できます。
東洋医学では、気力や体力が低下している状態を「虚」、発熱や緊張している状態を「実」、虚でも実でもない正常な状態を「中庸」と呼んでおり、腰痛は主に「腎虚」、「肝虚」、「脾虚」が要因と考えられています。
なお、腎虚、肝虚、脾虚は腎臓、肝臓、脾臓の機能が低下しているという意味ではありません。使われている漢字のせいで、つい西洋医学の臓器(肝臓・心臓・脾臓・肺・腎臓)と混同してしまいますが、東洋医学では人間の体の働きを「肝・心・脾・肺・腎」の5つに分類して「五臓」と呼んでおり、例えば腎虚は五臓の腎の働きが低下しているのです。
それでは、腎虚、肝虚、脾虚を中庸に整えるのに効果的なツボを紹介します。
【東洋医学における体の要素】
●気(き)
目には見えないエネルギーのことで、血や津液が全身を巡るのをサポートしている。
●血(けつ)
全身に栄養を送り届ける存在のことで、おもに血液のこと。精神を支える働きも持つ。
●水(すい)津液(しんえき)
唾液・胃液・涙・汗など、血以外の体内の水分のことで、五臓の働きや体温調節を助ける。
【東洋医学における肉体の働き】
●肝(かん)
気や血の流れを円滑にし、各部位に送る血量をコントロールしているほか、筋肉の運動機能も司っている。
●心(しん)
五臓の働きを管理しており、全身に血を巡らせるポンプの役割を持つ。精神活動にも影響を与えている。
●脾(ひ)
食物から得た栄養を気・血・水に作り替え、肺に送っている。脾の働きが悪いと体脂肪がたまりやすくなる。
●肺(はい)
古くなった気を吐き出し、吸い込んだ空気をろ過して新しい気に換えている。働きが悪いと免疫力が下がる。
●腎(じん)
生命エネルギーを保管する場所で、全身の水分代謝を司り、体や臓器の温度を上昇させる役割も担っている。
【東洋医学における腰痛の原因】
●腎虚(じんきょ)
長時間「立つ」ことで腰に負担をかけている人に多く、体が冷えている傾向がある。
●肝虚(かんきょ)
長時間「歩く」ことで腰に負担をかけている人に多く、婦人科系の病気に悩む傾向がある。
●脾虚(ひきょ)
長時間「座る」ことで腰に負担をかけている人に多く、腰の冷えや消化器系の病気に悩む傾向がある。
●気虚(ききょ)精神的なストレスを抱えている人に多く、
腎虚・肝虚・脾虚を引き起こすリスクがある。
【ツボを刺激する時のコツと注意点】
(1)自分の指が基準
「指2本分外側」など、ツボの位置を探す場合は、自分の指の横幅を基準にする。
(2)親指を使うのが基本
探したツボを刺激する場合、親指で指圧するのが基本。ツボ周辺をマッサージしてもよい。
(3)反応が違う場所に注目
指で押したり、軽くつまんだりすると、痛み・しこり・張りを感じる場所にツボがある。
(4)呼吸に合わせて刺激
息を吐きながらツボを5秒間押し、息を吸いながら3秒かけてツボを押す力を抜く。
※ツボの位置は個人差がある。
※ツボの刺激は入浴後など血行がよい時間帯にするのが理想的。ただし、飲酒後、食後、空腹時、さらに発熱時や体調不良時は避ける。