からだ

腰痛予防にぴったりの運動「ウォーキング」の装備や注意点、靴の選び方。

  • イラストレーション・松元まり子 文・山下孝子

特別な道具は不要でしかも基本的に無料

体操やストレッチング以外に、腰痛を予防・改善するためにおすすめの運動は、「歩く」というおなじみの生活動作を用いたウォーキングです。

「正しい姿勢」を意識しながら歩くと、姿勢を保つために大切な腹筋、背筋、腹斜筋、大臀筋などの筋肉を鍛えられます。

さらに、ウォーキングは有酸素運動ですので、中高年以降にたまりやすくなる体脂肪の燃焼が促されるため、肥満や脂質異常、さらに高血圧や糖尿病といった生活習慣病の予防・改善にもなります。

ウォーキングは特別な道具が不要なうえ、プールやスポーツジムのように使用料が不要です。さらに、屋外で常に移動しているので、気分転換になるうえ、新型コロナの流行で問題となっている「三密」を心配せずに取り組むことができる点が魅力です。

ただし、ダイエット目的のウォーキングでは「大股で、腕を振り、速く歩く」ことを推奨していますが、年配の方が健康維持のためにウォーキングを始める場合は、「小股で、腕を振らず、ゆっくり歩く」ほうが適切です。

足の筋肉が衰えてくると、すり足で歩くようになり、「歩く」という生活動作には転倒のリスクが高くなります。そのため、ウォーキングをする場合は、自分の足に合った運動用シューズを使い、「かかとから着地して、親指で地面を蹴る」という足の裏の重心移動の順番を守るようにしましょう。

なお、スポーツジムでトレーニングマシンを利用する場合は、自分の体力に合った設定で利用できるように、トレーナーのアドバイスを受ける必要があります。

【ウォーキングの装備】

●帽子
夏場は直射日光から頭部を守るため、冬場は防寒のためにかぶるほうがよい。

●衣服
夏場は熱中症、冬場は風邪を予防するため、吸湿性や発汗性がよい衣服を選ぶ。

●靴
自分の足のサイズにぴったりの運動用シューズを選ぶ。足の甲を押さえてくるぶしまで覆う「チャッカブーツ」タイプのデザインが理想的。

(注意)
防寒のために手袋だけでなく耳あて(イヤーマフラー)も着用する場合は、音が聞こえづらくなってしまうものは安全のために避ける。

【ウォーキングの注意点】

(1)1日の歩数は合計5000~6000歩にする
(2) 運動習慣がない人は少ない歩数から始める
(3) 足腰の負担を減らすため前後にストレッチを行う
(4) 天気が悪い日や体調が悪い日は無理をしない

歩いても疲れない靴の選び方

ウォーキングを始める時に大切なのが靴選びです。足に合わない靴を選んでしまうと、疲れやすいうえ、転倒するリスクが高くなるからです。

靴選びの基本は、自分のサイズにぴったりのものを選ぶこと。大きいものは靴の中で足が遊んでしまい、歩く力が正しく伝えられずにかえって疲れやすいそうです。ジャストサイズの目安としては、

1: 爪先に1〜1.5センチ程度の余裕がある。
2: 一番横幅が広い親指と小指の付け根(図A)がしっかり靴にフィットしている。
3: かかと部分が頑丈で、しかも歩いた時にしっかりと足にくっついてくる。

といった条件が挙げられます。

高齢者の場合は、加齢によってかかとの脂肪が減っています。かかとが受ける衝撃を吸収して腰への負担を軽くするために、かかとが接する部分(図A)にクッションが入っていることも条件に加えるとよいでしょう。

次に転倒しづらい靴を選ぶポイントですが、まずは足の甲を押さえてくるぶしまで包み込むデザインであること、特に高齢者の場合は、適度に厚みがあって衝撃を吸収し、しかもすべりづらい靴底であることが大切です。

また、筋肉の衰えによって地面を蹴る力が弱まりすり足になっていることが多いため、爪先部分が少し地面から浮いていること、足の指の付け根部分(図B)が図Cのように適度に曲がることも大切になってきます。

なお、昔はよく「足がむくむ夕方に靴を買え」と言いましたが、現在では足がむくむ時間帯は個人差があるため、「体調がよい時に靴を買え」に変わってきているそうです。

●一般社団法人足と靴と健康協議会

1965年に発足した日本婦人靴研究会を前身とする、シューフィッターの養成認定機関。消費者の健康に配慮した靴を提供できるように、調査研究や情報収集、さらに啓蒙活動なども行っている。

体重負荷が小さくなる水中ウォーキング

水には浮力があるため、水中ウォーキングは通常のウォーキングよりも体重負荷が小さくなります。そのため、腰や膝を痛めている人、肥満の人にとっては、腰や膝への負担をかけずに体を動かすことができます。

さらに、水中で動かすと水の抵抗を受けるため、運動効果がアップする点も水中ウォーキングの魅力といえるでしょう。

ただし、あまりに水の抵抗が大きすぎると疲れやすくなってしまうので、プールの浅い部分(水中ウォーキング用のレーンなど)を選ぶようにしましょう。

また、通常のウォーキングのように「正しい姿勢」で歩くと、水の抵抗で上半身が後ろに傾くため、反り腰にならないように、やや前傾姿勢で歩くのが水中ウォーキングの注意点のひとつです。

なお、水中は汗をかいていることがわかりづらく、水分補給を怠りがちです。水分不足になると水中でこむら返りが起こるリスクが高くなるため、適度に休憩をとり、水分補給することも大切です。

さらに、水中は体を冷やして血行が悪くなるリスクがあります。冷えも腰痛を引き起こす要因のひとつですので、暑い時期であっても温水プールを利用するようにしましょう。

【水中ウォーキングの注意点】

(1) 上半身を少し前傾させて歩く
(2) 適度に休憩をとって水分補給
(3) 温水プールで体を冷やさない

伊藤晴夫

監修

伊藤晴夫 さん (いとう・はるお)

整形外科医

メディカルガーデン整形外科院長。JCHO東京新宿メディカルセンター(旧東京厚生年金病院)元副院長・整形外科部長。岐阜大学医学部卒業。腰痛疾患や股関節疾患の臨床に長年携わり、一流アスリートの治療にもあたっている。『腰痛の運動・生活ガイド』(日本医事新報社)、『腰痛をすっきり治すコツがわかる本』(永岡書店)など、腰痛関連の著書・監修書多数。

※プロフィールは雑誌掲載時の情報です。

『Dr.クロワッサン 脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、ぎっくり腰もスッキリ! 腰痛の新常識』(2020年8月27日発行)より。

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE

※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

人気記事ランキング

  • 最新
  • 週間
  • 月間