からだ

塩分過多で起こる動脈硬化やむくみ、肌トラブル…今すぐ減塩生活を始めましょう。

  • イラストレーション・サンダースタジオ 文・小沢緑子

日本人は塩分過多。自治体レベルでの取り組みも進んでいます。

日本人の食事における塩分摂取量は多いといわれている。厚生労働省による、日本人の一日あたりの食塩摂取の目標量は成人男性は7.5g未満、成人女性は6.5g未満(「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より)。

「目標量は5年ごとの改訂のたびに少なくなっていますが、世界的に見るとWHO(世界保健機関)では成人の一日あたりの食塩摂取推奨量は5g未満で、日本はまだ高い基準にあります」と、管理栄養士の若子みな美さん。

背景としては、「もともと和食では塩分量が高い調味料を使う料理が多いことが挙げられます。ただ、近年は生活習慣病を未然に防ぐために、食生活を見直そうという流れが主流に。国だけではなく、自治体を挙げて減塩を普及させる取り組みも進んでいます」。

たとえば長野県のおいしくゆるやかに減塩する提案を行う「ゆるしお」、秋田県のなじみのある民謡で減塩を呼びかける「新・減塩音頭」など、ユニークな取り組みが進んでいる。

自分の摂取量を把握して、今すぐ減塩生活を始めよう。

若子さんがクリニックで栄養相談を受ける際、患者からよく言われるのが「自分では減塩しているつもりなのだけど……」という言葉。

「塩ひと振りのつもりでもつまみ方次第で量は変わりますし、1g多いだけでもチリも積もれば山となります。実際にいつもの料理に目分量で使っている塩、醤油、味噌など塩分の多い調味料を一度、計量スプーンに移して量ってみることをおすすめしています」

小さじ1杯分の場合、塩は5.9g、醤油は0.9g、味噌は0.7gくらいの塩分が含まれている。それらと比べると、成人女性の一日あたり6.5g未満という目標量もおおよそイメージできるようになるはず。

「最近はおいしく使える減塩調味料が増えているので、試してみることをおすすめ。日本人が摂取している塩分の約4割は塩、醤油、味噌由来の3つといわれているので、そのうち何かひとつでも減塩商品に替えることで、手軽に減塩を始めることができます」

“旨み”や“香り”に置き換えを。味覚が敏感になり、塩なしでも満足。

毎日の食生活で“味覚を育てる減塩”を提案しているのが前出の医師、渡邉美和子さん。

「いきなり減塩を、と言われても食事が味気なくなるのではと躊躇する人もいると思いますが、ほんの少し工夫するだけで減塩は無理なくできます。まずは塩分がより少ない調味料へと置き換えていくことから始めると、塩分控えめの味に慣れていきます」

醤油を多用しがちなら酢やポン酢へ。さらにかぼすやレモンなどの柑橘系の酸味、またわさびや山椒、ハーブなど風味や香りの強いものに置き換えていくのがおすすめという。

「また、日本には昔から鰹節、椎茸、昆布などの出汁を料理に活かす知恵があります。今は便利な市販の出汁パックなどもありますし、たとえば湯通しするように出汁に食材をくぐらせるだけでも、出汁の旨みや香りが移りおいしく味わえます。それに食材本来の味が引き立つために味覚が次第に鋭敏になり、塩を使わなくても満足できるようになります」

ストイックになりすぎないのもコツ。カリウムを摂ることも忘れずに。

「塩分コントロールというと難しく考えがちですが、腎臓病などの病気でない限り、ストイックになりすぎないことも長続きさせるためのコツ。
一日3食とも減塩しなくても、『お昼に塩分が多めだったかな』と思えば、その分、夕食で控えればいい。また旅行中は神経質にならずその土地の味を楽しみ、帰ってきたら控えめにして帳尻を合わせるとか、普段は減塩を意識した食生活をベースにしつつ、メリハリをつければいいと思います」(若子さん)

また、体内から塩分の排出を促すミネラル=カリウムを意識して摂ることも忘れずに。

「カリウムは野菜や果物に多く含まれています。水溶性なので生のままか、調理するなら汁ごと摂れるメニューで。もし毎日味噌汁を飲む習慣があるなら、野菜をたくさん入れて具だくさんにして、その分、汁は少なめに盛りつけると味噌の塩分を抑えつつ、野菜のカリウムを摂ることができます」

毎日続けられる方法からまずは始めよう。

渡邉美和子

渡邉美和子 さん (わたなべ・みわこ)

東京ミッドタウンクリニック副院長・ 特別診察室長・外来診療部長

内科医。日本抗加齢医学会理事。脳心血管抗加齢研究会評議員。独自の食指導「安心で美味しい食の医療プロジェクト」にも力を入れる。

若子みな美

若子みな美 (わかこ・みなみ)

管理栄養士、減塩料理家

腎臓内科クリニックで非常勤にて生活習慣病の栄養相談を行う。簡単でおいしい減塩を広めるために、減塩料理家としても活動している。

『クロワッサン』1076号より

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