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野菜の鮮度と栄養素を保つ保存方法、素朴な疑問にお答えします。

野菜の栄養を余すことなく食べるには? 食品成分研究者で医科学博士の名取貴光さん、管理栄養士の岩崎啓子さんに教わります。

野菜指導/名取貴光 料理・栄養指導/岩﨑啓子 撮影/黒川ひとみ 文/韮澤恵理

Q.保存の仕方で野菜の栄養分は変わるの?

保存方法次第で栄養成分は変わります。野菜は調理するまで生きています。人が環境で疲れたりストレスを感じるように、野菜も置かれた場所や処理の仕方で栄養も味も変わるのです。

1つ目のポイントは育ったときと同じ姿勢で保存すること。
土から生えていた葉野菜は根を下にして、根菜は土に埋まっていたときと同じ向きにするのが正解。

これは、縦に生えていた植物を横に置くと、再び縦に伸びる姿勢になるために曲がろうとして、エネルギーを使うから。曲がるために野菜の中に蓄えた栄養素を使ってしまうのです。畑での位置関係を再現することで、野菜の鮮度は保たれます。

【畑にあった姿で保存する】葉野菜や根菜などは買ってきた袋のままか、野菜保存袋に入れて立てて保存する。牛乳の空きパックやペットボトルの上部を切り落としたものに立ててもいい。
【畑にあった姿で保存する】葉野菜や根菜などは買ってきた袋のままか、野菜保存袋に入れて立てて保存する。牛乳の空きパックやペットボトルの上部を切り落としたものに立ててもいい。

 

2つ目は、植物が成長していく「成長点」を取り除くこと。葉や根は、もっと大きくなろうと伸びていきます。こうすると、成長する先に栄養を使われ、野菜の中の甘味やうま味、栄養素などが消費されてしまうのです。大根やかぶ、にんじんの葉のついていた部分と先端、キャベツの芯などは買ってきたらすぐに切り落としましょう。買ってきたらすぐに食べるか保存期間を短くし、すぐに調理をしてしまうのがベストです。

【成長点は切り落とす】(右)キャベツは内部から成長する野菜なので写真のように包丁を入れて芯をくりぬくと成長が止まる。成長点をカットするツールもある。 (左)大根などの根菜類は写真のように葉の付け根から少し下で切り落とすと、葉が水分や養分を吸い取らない。かぶやにんじんも同様。
【成長点は切り落とす】(右)キャベツは内部から成長する野菜なので写真のように包丁を入れて芯をくりぬくと成長が止まる。成長点をカットするツールもある。 (左)大根などの根菜類は写真のように葉の付け根から少し下で切り落とすと、葉が水分や養分を吸い取らない。かぶやにんじんも同様。

 

野菜の鮮度を保つポイント

●水分キープ
野菜の鮮度を保ついちばんのポイントは水分の保持。乾燥を防ぐことで、採れたての栄養分をそのままに。

●栄養素キープ
野菜は生きるために収穫後も栄養素を使っているので、成長を止め、エネルギーを消費させないための正しい保存を。

●おいしさキープ
基本的には採れたての野菜が最もおいしい。乾燥や成長、老化でおいしさが損なわれるのを防ぎ、早めに食べる。

野菜の豆知識

●ハーブや香味野菜はキッチンペーパーテクで長持ちさせる。

しそやハーブなどは少量ずつ薬味として使うことが多く、残りが乾燥したり、傷んでしまうことも少なくない。
冷凍すると味も香りも落ちてしまい、食感が失われるのでなんとかしたいときに便利なのが、濡らしたキッチンペーパーに包んで密閉できる保存容器に入れる方法。1〜2週間くらいは長持ちする。

キッチンペーパーはちょっと多めの水でしっかり湿らせること。密閉容器の底に敷いてハーブやしそを入れるだけでもOK。キッチンペーパーをかぶせるようにして置くと、より水分がキープできる。
キッチンペーパーはちょっと多めの水でしっかり湿らせること。密閉容器の底に敷いてハーブやしそを入れるだけでもOK。キッチンペーパーをかぶせるようにして置くと、より水分がキープできる。

Q.野菜の置き場所で よくいう「冷暗所」とは?

野菜は「冷暗所」に保存といわれるけれど、冷暗所ってどこ?と思う人も多いでしょう。

昔は台所が北側の暗い位置にあり、土間や勝手口などの薄暗くて涼しい場所があったため、食材をこの「冷暗所」に保存する習慣がありました。

けれど、最近ではキッチンは明るい場所にあることも多く、気密性の高い住宅では、冷暗所がない場合も。

床下収納庫や階段下の倉庫などが比較的向いていますが、冷蔵庫の野菜室は、冷蔵室ほど低温ではなく、でも室温に左右されない置き場所です。一般的な野菜は保存袋や新聞紙に包んで野菜室に入れるのがいいでしょう。

ただし、じゃがいもやたまねぎ、泥付きごぼうなどは低温で高湿度な野菜室が苦手。新聞紙などに包んで暗くて温度の変化が少ないところで保存しましょう。

買ってきたときにまだ未熟なものは、おいしくなるまで室温で成熟を待ちましょう。

【冷暗所で保存したい野菜】低温障害を起こすじゃがいもやたまねぎ等は新聞紙に包んで暗い場所に。泥付きごぼうも新聞紙に包んで。
【冷暗所で保存したい野菜】低温障害を起こすじゃがいもやたまねぎ等は新聞紙に包んで暗い場所に。泥付きごぼうも新聞紙に包んで。

Q.保存袋によって栄養の量が変わるって本当?

野菜は生きています。水分の蒸発を防いだほうがいい野菜、呼吸を妨げないほうがいい野菜があり、なかには独特のガスを出すものも。

適切な保存袋に入れて鮮度を保つことが栄養素を長持ちさせることにつながります。その野菜のためだけでなく、他の野菜への影響を防ぐためにも重要です。

【売っていた袋が最高】 売っていた袋は、小さな呼吸穴があるなど、鮮度を保つ工夫がなされている。

【売っていた袋が最高】
売っていた袋は、小さな呼吸穴があるなど、鮮度を保つ工夫がなされている。

野菜の鮮度と栄養素を保つ保存方法、素朴な疑問にお答えします。

【余ったブロッコリーなどは穴開きのポリ袋で野菜室へ。】
野菜保存専用のポリ袋には小さな穴が。野菜の呼吸をコントロールしながら冬眠状態で保存することができる。食べごろの野菜はこの袋に入れて野菜室へ。

Q.常温で保存したほうがいい野菜もあるの?

野菜をなんでも野菜室に入れるというのは間違いです。未熟なトマトなどは熟すまで室温に置き、その後冷蔵室で冷やして食べます。

冷やし過ぎると低温障害を起こす野菜もあり、なす、きゅうり、さやいんげん、いも類などは低温が苦手。野菜室に入れるなら新聞紙などで冷気をしっかり遮ります。

【常温で保存したい野菜】まるごとのかぼちゃは常温でOK。未熟なトマトなども熟すまでは常温で。熟したら冷蔵室で冷やすといい。
【常温で保存したい野菜】まるごとのかぼちゃは常温でOK。未熟なトマトなども熟すまでは常温で。熟したら冷蔵室で冷やすといい。

 

  • 名取貴光

    名取貴光 さん

    食品成分研究者 医科学博士

    山梨学院大学健康栄養学部教授、副学部長。山梨大学大学院医学工学総合教育部人間環境医工学専攻博士課程修了後、名古屋大学大学院医学系研究科研究員を経て現職。専門は食品科学、神経科学。日本農芸化学会、日本生化学会などに所属し、生体や食品を構成している成分が体の中でどのような働きをしているか、脳神経系統を中心に研究を続けている。

  • 岩﨑啓子

    岩﨑啓子 さん

    管理栄養士 料理家

    聖徳栄養短期大学を卒業後、同大学研究室助手、料理研究家のアシスタント、保健所での栄養指導などを経て、料理研究家として独立。書籍や雑誌、メニュー開発などで活躍。栄養バランスを考えた、やさしく飽きのこない味で、簡単に作れる毎日の家庭料理を多数提案している。数十冊の料理書をはじめ、ダイエットや食事療法の頼れる著書も多数。

    ※プロフィールは雑誌掲載時の情報です。

『Dr.クロワッサン 体に効かせる野菜の食べ方』(2020年9月28日発行)より。

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