「男性の仕事には定年があるのに、女性はいつまでも衣食住を整える仕事から解放されません。掃除は3日くらいしなくても死にませんが、料理はそうもいかないので疲れながらもしている。女性も60代を迎えたら調理定年を考えてもいいのではないでしょうか」
そう語るのは、高齢者のリアルをユーモラスに綴った書籍も話題の評論家・樋口恵子さんだ。
調理定年とは、手作り主義をほどほどにし、外食やテイクアウト、スーパーのお惣菜などを上手に取り入れながら、必要な栄養を摂ること。
数年前の年賀状で、料理上手な友人たちが声を揃え「あんなに好きだった料理が、この歳になると億劫になる」と書いてきたことで、思い至ったという。
「雑誌に寄稿したところ、『みんな同じで、ホッとした』という声が届きました。料理が億劫になること自体、自分を責めてしまう女性が多いんですよね。でも仕事の定年が65歳だとすると、そこから平均寿命までまだ20年あります。妻の調理定年も、認めてもらっていいと思います」