からだ

その一杯は体にとって毒?薬? お酒を長く楽しむための新知識。

ほどほどなら問題ないんでしょう? の神話も今や崩れつつ……。新しいお酒との付き合い方。
  • 撮影 ・黒川ひろみ イラストレーション・死後くん 構成&文・堀越和幸

百薬の長? 百害あって一利なし? お酒がピンチに立たされている。

お酒は百薬の長だからーー。お酒が好きな人にとって最後の砦だったこの言葉が近年はゆらぎはじめているのだという。肝臓専門医の浅部伸一さんによると、

「少し前の疫学調査では、確かに少量飲む人は飲まない人よりもある範囲では死亡率が下がる、という報告があったのですが、最近はいろいろな調査が盛んに行われるようになり、そうとも言えないよね、という考え方が主流になってきています」

とりわけ顕著なのはがんで、飲酒量が増えれば増えるほど、リスクは明らかに上がるらしい。

「かつてはタバコをターゲットにしていたWHO(世界保健機関)も近年はお酒を減らすよう勧めています。これは私の推測ですが、長生きをするようになって、お酒の害がより見えやすくなったのではないか」

にわかに雲行きが怪しくなってきたお酒だが、では、どう向き合うべき? そのヒントを探っていこう。

飲まない人は世界的に増えている。彼らの名前はソバキュリアン。

●梅森 妙さん 編集者

毒か薬かを語る前に、今、お酒を飲まない人は増えている。編集者の梅森妙さんはある日、ネットで海外のトレンド、“ソバーキュリアス”という単語に出合った。

「ジャーナリストのルビー・ウォリントンの書いた本が話題になっていて、飲まない生き方という邦題を付けて昨年末に翻訳本を刊行しました。ソバーは素面、キュリアスは好奇心で、単語は著者の造語です」

人並み以上、ザル以下に飲み続けてきたルビーの赤裸々な体験談や深い考察は、ぜひ本書に当たってほしいのだが、梅森さんはなぜこの言葉に惹きつけられたのか?

「日本でも飲まない若い子が増えていますよね、忘年会スルーなんていう言葉もありますし。価値観の多様化を感じていたからだと思います」

飲まないと時間が増える、体の調子もいい、お金も貯まる。が、……。

「お酒は体によくないのはわかります。でもお酒は解放してくれるし、人との距離を縮めてくれる。個人的にはそういう時間は人生にあっていいと思う。私はソバキュリアンではありませんが(笑)、これからは自らの意思で“飲まない”の選択をする人は増えていきそうな気がします」

脱アルコールで開ける新しい人生(方丈社 1,760円)。

減酒でも、節酒でもない。  「操酒(そうしゅ)」というお酒の愛し方。

●葉石かおりさん エッセイスト、酒ジャーナリスト

『酒好き医師が教える最高の飲み方』ーーそんな飲み方があるなら教えてほしい、と言わんばかりに葉石かおりさんはさまざまな専門医を訪ねて本をまとめた。シリーズ2冊はベストセラーになった。

「取材のたびに先生に怒られてました。そんな飲み方してると長生きできないよ、と」

レポーター、週刊誌記者という職歴を持つ葉石さんが本格的に飲むようになったのは24歳の頃から。

「もう花が開いたよう。毎日がパーティーみたいな飲み方をしてました」

それが50歳を過ぎた頃から中性脂肪値が上がり始め、ハイボールの飲み過ぎがたたってか逆流性食道炎を患う。おまけにこのコロナ禍では、

「仕事が激減し、失職不安に苛まれまして。気がつけば早い時間から家で飲みだし、業務用の5Lウイスキーがあっというまに空になった日にはさすがに怖くなって……」

酒の飲み方を説く著者が何をやっているのか。そんな責任感もあいまって、昨年から飲み方を変えた。

「通信制の大学生になったこともあり、今は週末だけ飲んでいます。無理に減らそうとするとつらくなるから、減酒や節酒ではなく、私は“操酒”と呼んでいます。お酒は薬物と言う先生もいますが、私はNO SAKE NO LIFE。細く長く付き合いたい」

シリーズ13万部を超える、酒飲みのための福音書(共に日経BPマーケティング 1,540円)。

お酒好きの開発者がひらめいた、お酒→お酢、の飲酒ケア。

●奥山洋平さん 『キユーピー』研究開発本部食創造研究所ファインケミカル開発部酢酸菌チームリーダー、技術士

〈よいときOne〉はキユーピーの飲酒ケア商品だ。キユーピーといえばマヨネーズ。その会社からなぜこのような商品が生まれたのか? 開発担当の奥山洋平さんに聞いた。

「マヨネーズの原料は卵と油とお酢ですが、そのお酢はお酒を発酵させて造ります。弊社では自社工場でお酢を造っておりまして、お酒の発酵に使う酢酸菌はお酢ができるたびに廃棄していた。この酢酸菌を何かに利用できないかなと思ったのです」

酢酸菌はお酒をお酢に分解する。この働きは人間の肝臓と同じらしい。

「そうなんです。お酒を飲むと、食道、胃を通って肝臓にまわり、アルコール分解酵素によりお酢に変換されます。つまり、僕たちはお酒を飲むとおしっこと一緒にお酢を出していることになるんです(笑)」

多くの薬や飲酒ケアアイテムが肝臓の働きをサポートしようとするのに比して、肝臓そのものの役割りを担う点がこの商品の画期的なところ。ところで奥山さん自身のそのひらめきの源泉は、どこにあったのか?

「お酒は好きで2日に1日のペースで飲んでいます。自分が欲しかったというのは、正直、開発動機の一つですね。心と体の健康の両方を目指すのが人生の幸せならば、お酒は確かに心を救ってくれる。だからこそ健康的に飲みたいと思っています」

昨年12月にリニューアルして新登場。1日2粒が1粒になって酵素パワーアップ(30粒 3,240円)。
梅森 妙

梅森 妙 さん (うめもり・たえ)

編集者

昨年11月刊の『飲まない生き方 ソバーキュリアス』の翻訳本を担当。お酒は週末にワインを。一人で1本を空けることも。

葉石かおり

葉石かおり さん (はいし・かおり)

エッセイスト、酒ジャーナリスト

お酒は脳への報酬。だからそれ以外の報酬を作ることが「操酒」の鍵とも。葉石さんの場合は大学での学びも奏功した。

奥山洋平

奥山洋平 さん (おくやま・ようへい)

『キユーピー』研究開発本部食創造研究所 ファインケミカル開発部酢酸菌チームリーダー、 技術士

幼少の頃に『ゴジラ対ビオランテ』を観て以来、バイオマニアに。現在、酢酸菌を利用した免疫力アップの商品を研究中。

『クロワッサン』1066号より

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