からだ

細菌やウイルスと戦う唾液は健康を守る門番。たっぷり分泌させるには?

 「口は病の入り口。口を健康に保つ〝健口〟が全身の健康につながる」と、口腔外科医の古舘 健さん。
そのためにすべきことは何かを訊いた。
  • イラストレーション・間柴勇輔 文・藤田まゆみ

【唾液は健康を守る門番。たっぷり分泌させましょう。】

細菌やウイルスと戦う機能も。 唾液は体にいいことずくめ。

「口こそが病の入り口」と、古舘さんは言う。

しかし口には、細菌やウイルスと戦ってその侵入を防ぐ頼もしい門番も存在する。それが唾液だ。

食べものを飲み込みやすくする潤滑化機能、リンやカルシウムなどのミネラル成分によって初期のむし歯を修復する再石灰化機能など、唾液には健康をサポートするさまざまな機能がある。なかでもこの時期注目したいのが、抗菌機能。

「唾液にはIgA(免疫グロブリンA)という免疫物質が含まれています。免疫グロブリンは抗体として働くたんぱく質で、IgAは、5種ある免疫グロブリンのひとつ。血液中のリンパ球のなかのBリンパ球で作られるほか、唾液腺からも産生されています。これが細菌やウイルスを無力化して粘膜を守るように働くのです」

IgAを含む唾液はたっぷり出るに越したことはないが、加齢、生活習慣の乱れ、ストレスなどが原因で分泌量が減り、口の乾きが日常化している人は少なくない。
特に更年期の女性は、女性ホルモン・エストロゲンの減少により、口が乾きやすい傾向にある。

「唾液が少なくなると、むし歯が増える、口臭が強くなるといったトラブルが起こってきます。唾液の分泌量は体の水分量を示すセンサーでもありますから、口がカラカラな人は血液がドロドロの可能性もあります」

そう聞いて焦った人、ご安心あれ。実は唾液、ちょっとした心がけで増やすことができるのだ。

●唾液のおもな機能
1.抗菌・抗ウイルス機能
2.発声や飲食を助ける潤滑化機能
3.歯を修復する再石灰化機能

このほか、むし歯の原因となる酸を無効にする中和機能、食べ残しを洗い流す洗浄機能、デンプンの分解を助ける消化機能、味の物質を味蕾まで運ぶ運搬機能、
水分不足を知らせるアラーム機能などがある。

●唾液が減少するとこんなリスクが!
・ むし歯が増える。
・ 口臭が強くなる。
・ 食べものが飲み込みにくくなる。
・ 窒息や肺炎の危険性が高まる。

 口を動かし食生活を見直して、 唾液を増やす!

唾液を増やそうと思うなら、「意図して口を動かすこと」と古舘さん。

「おしゃべりを楽しんだり、カラオケで歌ったり。そんなことでもいいんです。コロナ禍でそれが難しいなら、電話で話す、本を朗読するといったことでもOK。口周りの筋肉や唾液腺に刺激を与えましょう。
口呼吸を鼻呼吸に改善するために考案された『あいうべ体操』は、唾液を増やすのにも効果があり、簡単にできるのでおすすめです」

毎日の食生活でも、唾液を増やすもの・ことを積極的に取り入れたい。

「唾液はほとんどが水分。原料となる水分は、こまめにかつ充分に補給しましょう。
といってもコーヒーやアルコール飲料には利尿効果があって、飲んだ量以上に尿として排出されてしまいます。結果的に水分不足を招くケースがありますので、水や麦茶がいいですね。お酒を飲むときは、飲む前に水分を補給しておくといいと思います」

食材はなるべく噛み応えのあるものを選び、「口に入れてから飲み込むまでに30~40回は噛んでほしい」。

「食べているときの姿勢も重要です。両足を床にしっかりつけて姿勢を保ち、左右の歯を均等に使って噛みましょう。足を組んで食べたり、スマホを見ながら食べるのは避けてほしいですね」

また、「あ」のつく食べもの(あまいもの、あぶらっこいもの、あじが濃いもの、アルコール飲料)は、摂り過ぎないよう心に留めておこう。

●細菌・ウイルスの天敵、免疫成分IgAとは?

唾液の成分は約99.5%が水分で、残りのわずか0.5%に抗菌機能をもつIgAやリゾチーム、デンプンを分解する酵素・アミラーゼ、粘膜を保護するムチンなど、多種多様な物質が含まれている。
口の中や腸管の表面など、粘膜中に分泌されるIgAは、細菌やウイルスを発見すると取り囲んで粘膜への付着を阻止。感染を予防する働きがある。そのメカニズムの詳細は解明されていない点も多く、今後の研究が待たれる。

古舘さんが「健康の門番」と称する唾液。その最前線で活躍するのがIgAだ。

手軽な「あいうべ体操」で、 唾液うるうるエクササイズ。

口周りの筋肉が拡張・収縮を繰り返すことで唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促す

「あいうべ体操」。左の1~4を1セットとし、それぞれを4秒前後かけてゆっくり行う。「唾液増加のためには10セット以上を、朝食前と夕食前などにそれぞれ行うようにして」と、古舘さん。考案者は福岡市・みらいクリニック院長の今井一彰さん。そもそもは呼吸法の改善が目的だったという。

(1)「あー」と、口を大きく開く。

(2)「いー」と、口を大きく横に広げる。

(3)「うー」と、ロを前に突き出す。

(4)「ベー」と、舌を突き出して下に伸ばす。

“健口”を考えた、食生活のポイントはここ。

スルメ、グミといった噛み応えのある食品は、自然と咀嚼回数が増えるので、唾液の分泌量アップが期待できる。
主食の白いごはんを繊維質の多い玄米ごはんや雑穀ごはんに代えるのも、同様の理由でおすすめだ。
また、ヨーグルトの継続摂取と唾液中の抗菌物質・IgA増加との関連を示唆する研究結果が報告されているものもある。
腸内細菌叢の乱れなどによって口腔の菌が腸管に定着し、炎症性腸疾患、大腸がんなどに関連するという報告もあるので、腸内細菌叢のバランスを整えるうえでも乳酸菌は要チェックだ。

●噛み応えのある食品をとる。
咀嚼回数が増えると、唾液の分泌も促される。スルメ、こんにゃく、昆布、グミ、ガムなどでおいしく唾液量をアップ。

●水分を意識して補給する。
水分は、通常の生活で一日に2.5L失われるといわれる。食事で摂れる水分と体内で作られる水分を差し引いた1.2Lが補給の目安。

●玄米や雑穀米を主食に。
玄米の食物繊維量(炊く前)は、100gあたり3gと、白米の6倍。風味に慣れない人は、白米に混ぜて炊いても。

●乳酸菌の働きにも注目。
腸内の細菌叢のバランスを整える発酵食品。ヨーグルトの継続摂取と、唾液中のIgA増加は関連するという報告も。

舌トレ・唇トレで口呼吸解消、ストレス減、唾液増を図る。

最後に、ストレスの軽減や唾液量アップにつながる口呼吸解消のトレーニング方法を伝授。まずは、いまの舌の位置をチェックしてみよう。

「本来舌の先は、上の前歯の後ろの粘膜に自然についているもの。口呼吸をしている人は舌の位置が下がり、下の前歯に押し付けている傾向があります。歯を食いしばるクセのある人もそう。気付いたときに舌を正しい位置に戻すだけで、口を閉じやすくなり、食いしばりによる顎の疲れもとれます」

この舌トレ同様、唇を大きく動かす唇トレも、口周りの筋肉をほぐして口を閉じやすくなる。“あいうべ体操”とともに実践してみたい。

〈 舌トレ 〉

●正常な舌の位置
舌がこの位置になければ、気付いたときに前歯の後ろの位置に戻す。

●低位な舌の位置
口呼吸をしているとき、舌の先は下の前歯に押し付けられている。

〈 唇トレ 〉

(1)上下の唇を軽く合わせる。

(2)上唇に下唇をできるだけ大きく被せ、下唇で上唇をしごくように数回上下に動かす。

(3)上唇と下唇のそれぞれに、反発するように力を入れながら元に戻す。

これを10回繰り返して1セット、1日3セットを目標に。

古舘 健

古舘 健 さん (ふるだて・けん)

口腔外科医、弘前大学医学部 附属病院歯科口腔外科助教

口と体を健康に保つ方法を広く発信。著書に『口がきれいだと、健康で長生きできる 万病・突然死を遠ざける近道』(KADOKAWA)。

『クロワッサン』1066号より

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