片麻痺の人のための、自分で椅子から立ち上がれる身体の使い方【介護術入門】
撮影・岩本慶三 文・天田 泉 モデル・くらさわかずえ スタイリスト・高島聖子 ヘア&メイク・村田真弓
(自分で)片麻痺の人のための【椅子からの立ち方】
片麻痺の人が椅子から立ち上がる場合、正面に前傾するとバランスが取りにくい。非麻痺側へ前傾すれば土台となる面積が広がり、安定して立ち上がりやすくなる。
(1)麻痺していないほうの足のつま先とひざを外側に開いて、土台となる面積を大きくする。
(2)麻痺していないほうに向かって前傾していく。
(3)椅子からおしりが上がってきたら、立ち上がる。
(4)麻痺していないほうの足にやや体重をおいて、姿勢を安定させる。
前傾して、頭の重みを生かす基本の椅子からの立ち方。
(1)椅子に座ったまま、骨盤と腰をまっすぐにする。
(2)股関節から上体を曲げて、徐々に前傾になる。
(3)頭がひざより前に出るまで前傾し、頭の重さでおしりが上がったら、椅子から立つ。
(4)股関節から上体を起こし、ひざを伸ばしてまっすぐな姿勢になる。
動きが身につけば介護される人に寄り添える。
岡田さんはかつて介護現場で重度介護に携わり、技術の改善に悩んでいました。レスリングや空手などの動きをヒントに、負担の少ない動きを試行錯誤していたとき、偶然目にしたのが甲野善紀師範の古武術。その無駄のないなめらかな動きを介護に取り入れ、合理的な身体運用にまとめあげました。岡田さんの提案する身体の使い方は「古武術介護」と呼ばれ、現場でも支持されています。
岡田さんの考えは、古武術的な要素を含む合理的動きを、介護に限らず、育児や日常生活の動作にいかすこと。それにはまず第一に、自分自身が動きを身につけることが大切だといいます。
「介護で身体を痛めるのは、そもそもふだんの身体の使い方で負荷がかかっているから。自分の身体もきちんと使えないまま、介護を行うことに無理が生じます。まずは基本の動き方を知り、重いものを持ち上げるときに中腰の姿勢を、お風呂掃除に前傾の姿勢を取り入れるなど、日常で実践しましょう」
日々の中で必要な筋力や体力も自然とついてきます。
「動き方が身についていると、被介護者の動きに寄り添えます。さらには、身体的な安心感から精神的にも余裕が生まれ、じっくりと介護に向き合うこともできるようになるでしょう」
『クロワッサン特別編集 介護の「困った」が消える本。』(2021年9月30日発売)