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60歳を超えて、これからの生き方に迷いを感じています。【89歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

産婦人科医師の野末悦子さんに教わります。
  • 撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

Q. 60歳を超えて、これからの生き方に迷いを感じています。

昨年、還暦を迎えました。5年近く続けていたホルモン補充療法(HRT)も、体調が安定したので2年前にやめました。仕事も、定年でやめています。離婚経験者で子どもはいません。
世間では盛んに人生100年時代と言われていますが、誰もが100歳まで生きないと思う一方、もし長生きしたら一人でどうしようと、時折不安に襲われます。野末先生が60歳頃は、人生をどのように考えていらしたのでしょう。(J・Yさん 60歳・無職)

A. どんな人生も、最後まで 「よりよく生きる」を選択してほしいと思います。

私が45歳で乳がんの手術をしたことは、このページでお話ししたと思います。

ご存じのとおり、乳がん罹患者はホルモン補充療法(HRT)を受けられません。更年期症状には漢方で対処していましたが、骨密度は70代の数値しかなく、50代で3度の骨折を体験。寝返りを打つのもつらいほどカラダじゅうが痛かったのですが、がまんして病院の仕事は一日も休まず続けていました。

ところが、60歳になる頃です。母親を自宅介護することにしたのですが、このカラダではとうていできない。HRTを始めよう、と。フランスにいる恩師に相談したところ、病後15年たっているし、半年に一度検診もしている。HRTを始めてもよいとアドバイスをもらったのです。

いざ開始したら、すぐにカラダの痛みは消え、骨密度も次第に平均値を上回るほどに改善してゆきました。

思い起こせば、人生に何ごとか起きるたびに、対処すべきように対処して生きてきました。乳がんの手術でリンパ節までとった後は、上がらない手では車の窓を開閉するハンドルが回せなかったのですが、パワーウィンドウに替えて(当時は少なかった)対応したり、毎晩、痛いほうの腋をもう一方の手で伸ばして可動域を増やしたり、できることは何でもしました。

100歳以上高齢者数の年次推移

100歳以上の人口は増え続けるなか、女性が圧倒的に多い。QOL(生活の質)維持のために何をすべきか選択が大事になる。厚生労働省「男女別百歳以上高齢者数の年次推移」「国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成29年4月推計)」より

定期的な検診を受けて、自分のカラダの変化に気を配ることはとても大事なこと。それでも人生、何が起こるか予想はできません。

確かなことは、何ごとか起きたら、全力で対処することが最善の方法だということ。勇気をもって誰かにアドバイスを求めたり、解決策を考えたり。最後まで、よりよく生きる方法を「自分で探す」という姿勢を忘れないでほしいと思います。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

 「できることを全力で探す」をあきらめない。(Dr.野末)

野末悦子

野末悦子 さん (のずえ・えつこ)

産婦人科医師

横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。

『クロワッサン』1054号より

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