近年、たくさんの研究結果をもとに、腸内細菌叢(そう)がヒトの健康を左右するといわれるようになりました。よく知られているのは、便秘や下痢などの整腸作用。そして体全体の免疫細胞の約7割は、腸に集まっています。
「腸内には多様な菌が棲(す)み着き、消化吸収を助けたり、免疫系を調整して有害な細菌から体を守ったり、感染症を抑制したり。また腸脳相関といって、腸は自律神経だけでなく脳にも影響を与えています。腸内細菌のバランスがいいとストレスに強くなり、うつの予防などにもつながります」
腸は、まさに心身の健康の鍵を握る臓器。しかし、生活習慣が変われば腸内環境も変化します。
永田さんが注目しているのが、この50年に増加した疾患と腸内環境との関係です。
「生活習慣病、がん、アレルギー、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)、発達障害、過敏性腸症候群。現代にこうした病気が増えている原因には、戦後の食事の欧米化が関係していると考えられます。昔ながらの和食の特徴である発酵食品や繊維質の食事を摂る機会が減ってしまった。その結果、腸内細菌に偏りが出て、腸内環境の悪化が進んでしまったのです」
腸内環境を積極的に整える対策として、一番の近道として注目されるのがプロバイオティクスです。摂取すると腸内細菌のバランスが安定し、善玉菌が増えやすくなるのがその理由。
「プロバイオティクスの摂り方にはコツがあります。善玉菌の餌となるオリゴ糖や食物繊維と一緒に摂ることです。免疫活性を期待するには、かなり多くの菌数が必要になります。発酵食品や食物繊維が豊富な食品を、できるだけ多く取り入れると良いでしょう」