腰に痛みを感じたとき、あなたはどうしていますか? とりあえず安静第一? 下手に動くとまた痛くなりそうなので、ベッドの中でじっとしている?
「日本ではまだまだ、そんな安静第一主義が根強く残っています。でも、世界的には腰痛=安静はもはや非常識。休んでいると日常生活動作は低下する一方で筋肉が硬くなり、脳とカラダの神経伝達も悪くなります。するとさらに身体機能や脳機能が低下して、腰痛が慢性化してしまうのです」
と、脊椎外科医の平尾雄二郎さん。たとえば、オーストラリアのビクトリア州の取り組みでは、「腰痛には安静が必要」という住民の意識を改革したところ、安静は最小限レベルになり、障害保険請求や医療費の減少が見られたという。
さて、慢性的な腰痛を抱えている人のうち、はっきりとした病名がつくケースはおよそ15%。残りの85%は病名のつかない腰痛。ヘルニアなどの病名がつく腰痛を特異的腰痛、病名のつかない腰痛を非特異的腰痛といいます。
「腰痛全体の85%が画像などで原因や部位を特定できない非特異的腰痛で、ぎっくり腰や筋膜性腰痛などの機能障害からくる腰痛、あるいは心因性腰痛がこれに当てはまります。脊椎外科は残りの約15%に当たる特異的腰痛の患者さんの手術をするのが主な仕事ですが、非特異的腰痛の予防のために日常生活でできることを提案していくことも重要と考えています」
厚生労働省による平成28年の国民生活基礎調査では、病気やけがでなんらかの自覚症状を訴えている人のうち、男性の症状の1位は腰痛、2位は肩こり、女性の1位は肩こり、2位が僅差で腰痛。
これは長年変わらずの順位で、腰痛はもはや国民病といってもいい症状。そして、その8割以上は病名のつかない腰痛ということ。