肺は呼吸をするときに使う臓器ですが、実は自力で膨らむことができません。
息を吸うと肋間筋という胸の筋肉が縮んで肋骨を引っ張り上げ、胸とお腹を分ける横隔膜(筋肉の膜)が下がります。そのおかげで胸郭(肋骨の内側の空間)が広がり、肺に空気が入り込んで膨らむのです。そして、息を吐くときは肋間筋と横隔膜が逆に動くことで、胸郭が狭くなって肺から空気が押し出されます。
胸式呼吸は肋間筋の動きが、腹式呼吸は横隔膜の動きが大きい呼吸法で、これこそが腹式呼吸が健康によいとされるポイントです。
「横隔膜が上下に動くことで、その周囲にあるインナーマッスルや内臓を刺激し、内臓の働きや血行がよくなります。代謝機能がアップするので内臓脂肪も落ちやすくなるんですよ」
内臓を刺激することで便通もよくなります。実際、椎名さんも次のように教えてくれました。
「便秘薬が手放せない極度の便秘症だったのに、意識して腹式呼吸をするようになってから自然なお通じが来るようになった、と報告してくださるセミナーの受講生の方は少なくありません」
肥満が免疫力を低下させること、人間の免疫力の約7割を腸内細菌が担っていることを考えると、腹式呼吸を身につけて、同時流行が心配されている新型コロナとインフルエンザに備えるようにしましょう。
「腹式呼吸は細菌やウイルスが体内に侵入しづらい鼻で呼吸すると、より完璧になります」
ただし、年配の方、特に女性は加齢や運動不足のせいで便を押し出してくれる腹筋が衰えている方が多いため、ここで紹介するストレッチで腹筋を鍛え直し、腹式呼吸の効果を上げてあげましょう。