背骨のS字カーブが崩れるとどうなる?
文/石飛カノ イラストレーション/宇和島太郎、松元まり子
(S字カーブの理由)
背骨は全体にゆるやかなS字カーブを描き、外部からの衝撃を吸収し、脳を守る。背中の筋肉もリラックスした状態にある。
(A)心臓と肺、肝臓と胃の一部は胸椎と肋骨、胸骨で守られている。背骨がS字を描いているとき、これらの臓器は正しい位置にあって、しっかり働いてくれる。その下の腸も圧迫されずにすむ。
(S字カーブが崩れると)
背骨のS字がくずれ、このような猫背の形になると、無理な姿勢で動くことになる。背中の筋肉にも負担がかかって緊張し、コリや痛みのもとになる。
(A)背骨の前傾が強くなると内臓や血管、神経が圧迫されてしまい、機能が低下して、不調を招きやすくなる。
背骨は26個の部品が積み上がった1本の柱。
改めて、背骨のしくみと働き、働きが低下することで起こるトラブルについて解説していこう。
骨盤から頭蓋骨に至る背骨の正式名称は「脊柱」。脊柱はひとつの骨ではなく、「椎骨」という24個の短い骨が積み重なっている1本の柱。ちなみに、骨盤の中央の大きな骨は仙骨、そこから続く小さな突起状の骨は尾骨。これを含めた脊柱の全パーツは26個になる。
脊柱は大きく3つのユニットに分かれていて、首の部分は「頚椎」、胸の部分は「胸椎」、腰の部分を「腰椎」という。横から見ると、頚椎は前に、胸椎は後ろに、腰椎は前にゆるやかに弯曲し、全体的にS字カーブを描いている。
着地をしたときの地面からの衝撃は、このS字カーブというしくみによって吸収され、脳への衝撃を最少限に留める。また、頚椎、胸椎、腰椎がすべて連動して働くことで、背中を反らしたり、丸めたりひねるという動作が可能になる。
「椎骨同士は椎間関節というとても小さな関節によって繋がれています。姿勢の乱れや運動不足などで椎間関節が動かなくなると、他の部分が動いて働きを補います。首の後ろに深いシワがある人は、頚椎の特定の部分だけを動かしているということ。動きすぎているところには負担がかかり、動いていないところは機能が衰えます」
また、背骨の中にある「脊柱管」というホースのような空間には「脊髄」という神経の束が通っていて、そのまわりに血管や神経が張り巡らされている。悪い姿勢で脊柱のカーブが乱れると、神経の伝達がうまくいかなくなり内臓の働きも低下する。
「年齢を重ねるとともに背骨の老化による不調が生じますが、若い人でもある部分の動きが悪くなって腰痛を起こしたり、内臓のトラブルに見舞われることもあります。だからこそ、ふだんから背骨を労ることはとても重要なのです」
背骨は脳や内臓を守り、自律神経とも密接な関係が。
『Dr.クロワッサン 痛みとコリをすっと消す、自分でできる整体』(2020年4月28日発行)より。
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