女性の美しい立ち姿を実現。タンゴから生まれた「タンギズム(R)」に辛酸なめ子さんが挑戦。
撮影・青木和義 イラストレーション・辛酸なめ子 文・一澤ひらり
まさに“痩せ見え”の理想。タンゴは男女一対となり、美しい姿勢で官能的に踊るしなやかなダンス。
そんな妖艶なアルゼンチンタンゴの動きから生まれたダンスエクササイズが「タンギズム(R)」だ。これを考案して、指導する五十嵐純子さんによれば、
「タンゴは本来男女で踊るペアダンスですが、セルフトレーニングとしてひとりで体を動かせるようにアレンジしたのが『タンギズム(R)』です。
ことに『タンギズム(R)・セルフケア』は美しい立ち方や姿勢、バランス、体幹強化、運動不足の解消を目的に、40~50代の女性に向けて作ったメソッドです。ダンサーのように背筋が伸びて、きれいなシルエットになりますよ」
姿勢が良くなる上に、男性と情熱的に踊ることもできそうだし、モテ気分が味わえるかも。私が求めていたものはコレだ! と『タンギズム(R)』の門を叩いたのは辛酸なめ子さん。
が、その基本のキはつま先重心の立ち方だった。
「つま先に重心があると下腹部に自然に力が入り、体の軸が安定するので、頭が前に出たり、肩が内巻きになるといった悪い姿勢が解消されます。そして姿勢に対する意識が、足先まで行き届くようになるんです」
という五十嵐さんの説明を受けて、辛酸さんがその立ち方にチャレンジ。
「楽勝と思いきや、つま先重心をキープすると脚がプルプルしちゃいます。でも、これならどこででもできますね」
つま先重心をするとき、両手をグーにして脇のちょっと下あたりを押さえる。こうすることで肩甲骨を閉じることなく、胸を開いた状態にできる。
「では、タンゴの基本になる脚の使い方をエクササイズしていきましょう。まずつま先立ちを4回行ってから、右脚を上げます。その脚を軸足の外側、内側、外側と移動させながら脚を下ろします。次に左脚も同様に行います」
この片足立ちが意外に難関。少しよろけながらタンゴの軽快な曲「ナーダ」に合わせてひたすら練習する。
「最初はみなさん、グラつきますけど、回数を重ねると重心が安定しますよ」
片足立ちで姿勢をキープ
かかとを揃えてまっすぐに立つ。両手はグーにして脇のすこし下で肋骨を押さえるように置く。できるだけ肩を落とす。
かかとの上げ下ろしを3回行い、4回目はつま先で立ったまま3カウントキープし、ゆっくりかかとを下ろす。
右の太ももをお腹に近づけるようにして、4カウントで上げていく。軸足の左脚に触れさせながら上げていくと安定する。
上げた右脚を左ひざの外側にタッチする。視線は真正面を見て、ぐらつかないように左脚に重心を置いて立つ。
左ひざの外側にタッチした右脚を、少し下ろし、左のふくらはぎ内側に移動させてタッチする。
さらに右脚を下ろし、左足首の外側に回して重ねるようにタッチする。
右脚を元に戻しながら床に下ろし、足を揃えて終了。左脚も同様に行う。
タンギズム(R)のステップには、 マインドフルネス効果も。
次はタンゴの基本のステップを取り入れたエクササイズ。
「これはコの字を描くように、前・横・後ろとステップを踏んでいきます。お尻の尾骨のあたりで両手を合わせ、胸を開いて行うので、動いていてもまっすぐな姿勢が保てますよ」
さらに、映画『ラストタンゴ・イン・パリ』の甘美な音楽に合わせて、コの字ステップを繰り返す。
「一定のリズムで単純な動きを続けることで、集中力を高めたり、自分の気持ちをコントロールしやすくなる、マインドフルネス的な効果があるんです」
と五十嵐さん。
その言葉に応えて、「わかる気がします。同じステップを繰り返していると無心になれるというか、心地よくなりますね」と辛酸さんが感想を伝えると、
「『タンギズム(R)』を踊っていると、音楽を聴きながら、同時に、動いている自分の体を感じるという2つのことに集中できて、マインドフルネスの状態に入りやすい。これを“ダブルフォーカス”と言いますが、気分がすっきりして、晴れやかになれるんです」
さて、辛酸さんのレッスンの仕上げは、ドレスを身にまとってタンゴのペアダンスの雰囲気を味わうこと。その艶やかな姿に五十嵐さんは、
「辛酸さん、背筋がまっすぐ伸びてきれいです。とても魅惑的ですよ」
と感心する。辛酸さんもうれしそう。
「セクシーな深いスリット入りドレスに、8cmのハイヒール。男性のエスコートなしでは踊ることも歩くこともできませんが、姿勢と女性ホルモンは活性化されそうです(笑)」
『クロワッサン』1049号より
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