梅雨バテや夏の疲れに打ち勝つ!腸活Q&A。
その秘訣を、専門家に教わります。
イラストレーション・植松しんこ 文・倉石綾子
Q.腸内環境が免疫にも関係するってほんと?
腸は最大の免疫器官といわれるが、事実、体内の免疫を司る細胞の6割以上は腸に存在している。免疫力をあげるには腸内環境を整えることが重要だ。
まずは腸内細菌に注目。腸内には約1000種、数十兆個の細菌が存在する。
「通常、老化に伴って免疫システムは低下します。腸内環境が悪い方向に変動するからです。さらに免疫機能下降時には自己抗体が増え、リウマチなどの自己免疫疾患症を誘発することも。加齢とともに腸活を見直しましょう」
と、腸内細菌に詳しい森田英利さん。腸内細菌の菌種が多いほど、腸内細菌による代謝物や刺激に多様性が生まれる。「いい腸内環境」とは代謝物や刺激が充実している状態を指すが、腸内細菌の種類や個数、構成比は生活環境や食事によって変化する。
つまり腸内環境のよしあしは、腸活次第なのだ。
Q.腸活とメンタルヘルスの関係とは?
「脳腸相関」という知見があるように、脳と腸は影響を及ぼし合う。
緊張やストレスによる腹痛はその一例で、脳が自律神経やストレス物質を介して腸にストレス刺激を送り、腸内環境を乱れさせる。腸内環境の乱れにより腸の働きが低下すると、それをキャッチした脳がストレスを感じるという悪循環に。
「腸内環境が整い、ビフィズス菌などが増えるとストレスに強くなります。ストレスを感じないからますます腸内環境が好転する。よい循環が生まれます」
腸内細菌が代謝する物質のなかには、恐怖や不安の感情を抑えるのに役立つものもあり、メンタルヘルス改善のための腸内細菌や発酵食品の活用について研究が進められている。
メンタルヘルスと腸内環境の改善のために、適度な運動や質のよい睡眠、ストレス源を減らすといったケアを心がけて。
Q.梅雨時季には腸内環境も乱れる?
梅雨に腸内環境は乱れがちかと問われれば、「そのとおり」と森田さん。けれど、それはジメジメとした気候などに直接由来するものではないそう。
「外因よりもむしろ内的な理由です。天気の悪い日が続くと外に出られず気分的に落ち込みがち。また、体を動かせないことも腸内環境を乱れさせます。梅雨に限らず、冷え込みの厳しい時季なども同じような状況に陥ります」
これを打破するのが軽い有酸素運動。有酸素運動といってもランニングやマラソンといったハードなものではなく、早歩きや遠いスーパーまで買い物に行く、駅で階段を使う、自転車をこぐ。そんな日常的な動作で充分効果があるので、日々のルーティンに取り入れて。
「運動による高揚感や爽快感がメンタルに働きかけるうえ、運動が腸に物理的な刺激を与えてくれるのです」
Q.腸を整える食材や食事について教えて。
腸内環境の観点から積極的に取りたいのは、有用菌(善玉菌)を摂取できるヨーグルトなどの発酵食品や、有用菌のエサとなる水溶性食物繊維など。
「日本人の大腸の有用菌といえばビフィズス菌が有名ですが、これらを活性化するのが水溶性食物繊維や難消化性のオリゴ糖。食材では、タマネギ、ゴボウ、大豆などに含まれます。水溶性食物繊維を含む食材は、海藻やキノコ類、オクラなどのネバネバ系。各社が販売する機能性表示食品も効果的です」
森田さん自身、ヨーグルトを積極的に取っているが、効率のいい摂取の仕方にはコツがあるそう。
「メーカーによって乳酸菌やビフィズス菌の種類が異なるので、自分に合うものを見極めて。一つの銘柄を1〜2週間継続して食べ続け、排便回数や便の状態をチェックしてみてください」
Q.腸内細菌を活性化させる生活スタイルってなに?
「いい腸内環境」のために増やしたい、腸内細菌の代謝物。
なかでも注目したい物質が、酢酸、酪酸、プロピオン酸といった短鎖脂肪酸。短鎖脂肪酸は腸内細胞のエネルギー源になるほか、腸内の炎症を抑え、体脂肪率を低下させるといった有用な作用を全身にもたらす。
「短鎖脂肪酸を増やすためには、大腸にすむビフィズス菌などの有用菌を増やしましょう。これらの餌となる水溶性食物繊維やオリゴ糖を摂取します」
前述のようにフィットネスも重要。ウィンドウショッピング程度の運動でも、する人としない人では短鎖脂肪酸の産生量が全く異なる。
「高タンパク質を摂取すると、運動をしたときと同じような腸内環境に変化することがわかっています。運動できない日は高タンパク質の食事を摂取するよう、心がける手があるかも」
『クロワッサン』1047号より