疲労とは体の疲れだと思っていませんか? 東京・睡眠疲労クリニックの院長、梶本修身さんに、そもそも疲労とはどういうものなのかを聞いてみました。
「疲労というと、体の疲れと思いがちですが、じつはそうではありません。家事をして体を使った疲労も、スマホによる眼精疲労も、イライラやストレスによる心的疲労も、すべての疲れの原因は脳にある『自律神経』の疲れが原因なんです」
掃除をして疲れたとしても、体の疲れではないとはどういうことだろう。
「かがんで、ふき掃除なんてしたら、ハァハァいいますから、体が疲れていると思う気持ちはわかります。でも、その程度の運動をして体が疲れたと感じても、実際には筋肉や内臓はほとんど疲れていないということが研究でわかっています」
■ 脳の自律神経が働くほど、体が疲れたと感じてしまう。
「では、どこが疲れているのかといえば、脳です。運動すると多くの酸素を必要とするため、自律神経は呼吸や心拍、血圧を高めます。しかし、高めすぎると心臓発作や脳卒中を起こしてしまうため、常に需給バランスをとって調整しているのです」
体調を整える仕事をしているのが、脳にある自律神経というわけだ。
「つまり、体が疲れているのではなく、脳が疲れると、人は疲労を感じるのです。体が疲れたと感じているのは、錯覚にすぎません。自律神経が疲れると、眉間のあたりにある眼窩前頭野(がんかぜんとうや)という場所にシグナルを送り、これ以上運動させないように、『体が疲れている』と勘違いさせる。つまり、疲労感は命を守ろうとする、動物共通の防衛本能なんです」
疲れを感じないようにするには、自律神経が働かなくてすむようにすればいい。
「脳を疲れさせないというと難しいように聞こえますが、誰でも簡単にできることが山ほどあります。『疲れないコツ』がわかれば、疲労感はかなり軽減されるはずです」