専門家に聞く、意外と知らない甘酒の基礎知識と最新の健康効果。
撮影・岩本慶三 文・一澤ひらり
Q.甘酒が甘いワケ
(A)
麹甘酒の甘みは100%ブドウ糖です。麹は蒸した米に麹菌を加えて繁殖させますが、100種類以上の酵素を産生します。その中のアミラーゼが米や麹のでんぷんをブドウ糖に分解して甘みが引き出されます。発酵の力のみで生まれる自然の甘みです。
Q.甘酒は何でできている?
(A)
麹甘酒の原料には米麹のみ、米と米麹などがあり、これに水を加え、麹が発酵する50〜60度の温度で一晩保てば出来上がります。アルコールも砂糖も入っていません。もう一つ、酒粕甘酒は酒粕と水と砂糖で作り、微量のアルコールが含まれていて、砂糖で甘みをつけています。
Q.甘酒はなぜ飲む点滴と言われるのか。
(A)
麹甘酒は栄養を補給するときの点滴とほぼ同じ成分なので、飲む点滴と言われるようになりました。麹甘酒には私たちの体に欠かせないアミノ酸やブドウ糖、ビタミンB群、食物繊維、オリゴ糖などの栄養素が豊富に含まれています。しかもアミノ酸やブドウ糖を代謝するときに必要なビタミンも麹は作り出しています。
Q.甘酒は太る?
(A)
データ的には太りません。トクホで義務付けられた過剰摂取試験を、麹甘酒で行いました。血糖値高めの24名に1本(118g)の甘酒を4週間、毎日3本ずつ飲んでもらいました。結果は体重、体脂肪率、空腹時血糖値に影響はありませんでした。
※倉橋・米井 日本醸造協会誌
Q.実証されている甘酒の健康・美容効果とは?
(A)
便秘の改善はデータに明らかに表れています。また疲労緩和、肌のハリ、大腸炎の予防や関節痛の緩和などが、酒造メーカーや大学などで研究されています。
※倉橋「生物工学会誌」97巻・第4号 P190〜194(2019)
いまアンチエイジングでホットな話題はエルゴチオネインです。ビタミンEの7000倍の強力な抗酸化力があり、麹はこの成分を作っていることがわかっています。
●疲労緩和
大学陸上部の長距離選手と短距離選手に甘酒を14日間飲用してもらい、長距離選手のほうが男女とも疲労度が軽減されたことが判明しました。
●便通改善
便秘気味の14名に甘酒を毎日1本(118g)ずつ1週間飲んでもらう臨床試験をした結果、1週間の排便回数が4.3回から6回に増えました。
[あまさけの継続的飲用は便通を改善する]
●肌のハリを高める
肌バリア機能が低下している40歳以上の女性で、甘酒を飲むと水分蒸散抑制効果が認められ、肌バリア機能が改善したという報告があります。
●大腸炎の予防
ラットに強制的に大腸炎を起こさせてその症状を検証した結果、麹甘酒や乳酸発酵甘酒には大腸炎予防効果が期待できることが明らかに。
●関節痛の緩和
「抗加齢QOL共通問診」というアンケート調査から、甘酒は関節痛の緩和に効果がある可能性あり、という結果が出ています。
Q.甘酒はいつ頃から飲まれている?
(A)
はっきりとはしませんが、古墳時代には甘酒の原型となるものが飲まれていたと『日本書紀』に残されています。江戸時代には今と同じ方法で甘酒が作られていて、夏を乗り切る滋養飲料として飲まれました。甘酒売りは夏の風物詩となり、俳句の季語にもなっています。甘酒という漢字が登場するのは江戸時代後期です。
わたしも実践しています!
118gのミニボトル1日1本を目安にして、朝昼晩に分けて飲んでも。(倉橋さん)
『Dr.クロワッサン 若返る 甘酒・麹の健康法』(2019年6月28日発行)より。