からだ

麹研究の第一人者に聞きました。麹菌の健康・美容効果。

麹菌は日本人にとってなじみのある菌ですが、健康と美容効果についてはまだ解明されていないことも多いようです。麹研究の第一人者に聞きました。
  • 撮影・岩本慶三 文・一澤ひらり

抗酸化力アップで若々しいカラダに。

ヨーグルトや乳酸菌は研究されて、スーパーでもたくさん売られているのに、なぜ昔から日本で飲まれてきた甘酒や麹菌はあまり研究もされず売り場も少ないのか。もっと甘酒を広めようと日本薬科大学で「甘酒プロジェクト」を立ち上げたのが麹菌研究の第一人者、北本勝ひこさん。

「乳酸菌に負けないパワーが麹菌にはあるし、日本古来の伝統飲料の素晴らしさをぜひ知ってほしいんです。麹甘酒は米麹を発酵させて作りますが、米麹とは麹菌というカビを、蒸した米に繁殖させたものです。麹菌は日本醸造学会から『国菌』と認定されていますが、国を代表する微生物を持っているのは日本ぐらいですね」

麹菌の機能性研究はあまり進まず、効果が証明されていないことも多いそうですが、徐々に麹甘酒の機能性が解明されてきています。

「まず整腸作用では、腸内フローラの善玉菌の代表格であるビフィズス菌を増やすオリゴ糖が含まれているので、善玉菌が増えて悪玉菌の増殖を抑制します。また麹菌の酸性プロテアーゼを食べると善玉菌が増えることや、グルコシルセラミドも善玉菌を増加させることがわかっています。このグルコシルセラミドには肌の水分を守る保湿作用や肌のバリア機能をアップさせる作用があり、美容成分としても注目されています」

米、こんにゃくやパイナップル由来のグルコシルセラミドは「肌の保湿力を高める機能」として、機能性表示食品の関与成分となっていますが、麹菌のグルコシルセラミドもほぼ同じ効果が期待できるそうです。

多細胞生物である麹菌(アスペルギルス・オリゼ)の電子顕微鏡写真。資料/北本勝ひこ
甘酒プロジェクト(日本薬科大学)が埼玉県上尾市の老舗酒蔵と共同開発した麹甘酒「甘こうじ」。問い合わせ:北西酒造 TEL.048‒771‒0011

さらに麹甘酒に含まれる美容や健康に良い機能性成分として、期待されているのがエルゴチオネインです。

「エルゴチオネインはアミノ酸の一種で、ビタミンEの7000倍とも言われる高い抗酸化力があることから、美容効果やアンチエイジング効果が期待されている抗酸化物質です。これはキノコに多く含まれますが、キノコと同じ菌類の麹菌もエルゴチオネインを作っています」

健康の源は腸にあり。腸管免疫系は免疫系全体のおよそ7割を占め、病原菌を識別して排除しています。

「ただ日本のように衛生状態が良くなると、時として免疫応答が過敏になり過ぎるのが問題ですね。アトピーや花粉症はその一例です。そういう意味では子どもの頃から甘酒を飲んで、日本の風土が育んだ麹菌のような安全な微生物を腸に入れる習慣をつけることは、とても大事なことだと思いますよ」

麹菌の健康・美容効果

(1)抗酸化作用(アンチエイジング作用)
麹に含まれる抗酸化物質ではコウジ酸やポリフェノールの一種、フェルラ酸などがありますが、「最強の抗酸化物質」として注目されているのがエルゴチオネイン。キノコに多く含有するため、同類の麹菌も期待されています。

(2)整腸作用
重要なのは腸内の善玉菌を増やして悪玉菌の増殖を抑えること。甘酒には善玉菌のエサであるオリゴ糖や食物繊維が豊富です。米ぬかで麹菌を増やした「米ぬか麹」には、善玉菌のビフィズス菌を増やす成分が見つかっています。

(3)免疫力アップ
腸には免疫細胞の約70%が集中し、病原菌の侵入を防ぐ免疫力を持っています。腸内環境を整える甘酒は、免疫力アップにも貢献している可能性大です。また、麹菌そのものにも免疫機能を高める可能性があると期待されています。

(4)保湿作用
麹に含まれるN-アセチルグルコサミンは、乾燥しがちな肌にうるおいを与え、グルコシルセラミドは肌の保湿力を高める機能が期待されています。また麹菌が生成するエチル-α-D-グルコシドの保湿作用も注目されています。

これから解明が期待される麹菌の健康効果

●目の下のクマの改善
甘酒を40~50代の女性が1カ月飲用したところ、目の下のクマが明るくなったという報告があります。血行がよくなり、目元の血液の滞りが改善したと考えられます。

●健忘症の抑制
薬剤を用いて健忘症を発症させたマウスを使った試験で、甘酒が記憶障害を予防する可能性のあることがわかりました。認知症や健忘症の改善に期待されています。

わたしも実践しています!

「発酵」や「醸す」を、五感で実感できる生甘酒。(北本さん)

マルコメの甘酒メーカー「糀美人」で甘酒を作って毎日飲んでいますが、麹と水だけで作るので簡単です。加熱をしないので活性している酵素が飲めます。

北本勝ひこ

北本勝ひこ さん (きたもと・かつひこ)

日本薬科大学特任教授、東京大学名誉教授、農学博士

30年間、国税庁醸造試験所および東京大学にて酵母と麹菌の研究に携わる。2016年「甘酒プロジェクト」発足。著書に『和食とうま味のミステリー』(河出書房新社)など。

※プロフィールは雑誌掲載時(2019年6月)のものです。

『Dr.クロワッサン 若返る 甘酒・麹の健康法』(2019年6月28日発行)より。

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