暮らしに役立つ、知恵がある。

 

骨粗しょう症が起こるわけと骨がもろくなる5つの原因。

骨密度、骨粗しょう症とはなに?
骨がもろくなるのはなぜ?
健康に年を重ねるために骨の代謝について知りましょう。

文・吉田真帆 イラストレーション・松元まり子

【カルシウムは命を守る成分】日々生まれ変わっている骨サイクルを知ろう!

骨は実は新陳代謝をしています。正常なら約5カ月で生まれ変わり、全身の骨が入れ替わるのは3年程度です。

破骨(はこつ)細胞によって骨が壊され、その刺激で、「壊れたから新しく作れ!」という信号が送られて、骨芽(こつが)細胞が血液中のたんぱく質やカルシウムから骨を作るというのが骨代謝のサイクル。

なかでもカルシウムは、心臓や血管を正常に動かす重要な成分で、足りないと、そちらに回されます。たんぱく質は、骨の「骨組み」。骨の健康には栄養素が重要なのはこうした理由からです。

<骨は新陳代謝している!>

骨粗しょう症が起こるわけと骨がもろくなる5つの原因。

(1)血液へ流出
カルシウムは筋肉を動かしたり神経の情報伝達をするなど、心臓の動きや脳の働きといった命に関わる体のバランスをとっている。血液中のカルシウムが不足すると、骨から血液へと溶け出して生命維持を優先する。

(2)破骨細胞
刺激によって骨を壊す働きをする。骨は壊されることで新しく作られるので、破骨細胞が活性化すると骨代謝が上がる。

(3)骨芽細胞
血液中のたんぱく質やカルシウムを利用して骨を作る働きをする。骨芽細胞が活性化すると丈夫な骨が作られる。

(4)血液から吸収
食材から摂ったカルシウムは血液によって運ばれ、骨に届けられる。

【気をつけたい女性ホルモン】骨がもろくなる理由、骨を強くする方法。

骨を作るときには、栄養素のほかにもさまざまな要因が関わります。

なかでも女性ホルモンは骨の細胞のバランスを保つ働きがあるため、閉経を機に骨密度が大きく低下することはよく知られています。

これは女性ホルモンが不足すると、骨破壊のスピードが骨形成のスピードを上回ってしまうためです。無理なダイエットや卵巣の疾患によるホルモン不足も骨密度低下の原因になります。

骨は刺激が加わることで「丈夫になろう」とします。逆に運動不足になると、骨密度は低下していきます。骨を丈夫にするためには、毎日の暮らしで歩く、動くことを意識しましょう。

骨形成に必要なビタミンDは紫外線に当たると体内でも作られます。逆に過度な日焼け対策が骨を弱くすることも。1日15分程度、日光に当たるのがおすすめです。

<骨がもろくなる5つの原因>

(1)無理なダイエット
無理なダイエットで生理不順や無月経になると、閉経同様に女性ホルモン不足が起こる。この場合、若くても骨密度が落ちてしまう。閉経後骨粗しょう症に対し、若年性骨粗しょう症、閉経前骨粗しょう症と呼ばれる。卵巣全摘出手術や乳がんのホルモン治療などでも同様のことが起こることがある。

(2)紫外線不足
摂取したカルシウムを体内に取り込む際に必須のビタミンD。体内で作る際には紫外線が大切な働きをする。緯度の高い地域や日光に当たらない環境の人は体内でのビタミンDの生成不足による骨密度の低下が起こりがち。過度なUV対策でビタミンD不足を起こすことも。一般に1日15分程度、日光に当たることが骨づくりには有効。

骨粗しょう症が起こるわけと骨がもろくなる5つの原因。

(3)閉経による女性ホルモン減少
女性ホルモンは破骨細胞の働きを抑制し、骨芽細胞の働きを助けて骨の健康を保っている。閉経で女性ホルモンの分泌が減ると、骨代謝のバランスがくずれ、破骨細胞が優勢になり、溶け出す骨の量が新しく作られる骨の量を上回り、骨がスカスカになっていく。

日本骨粗鬆学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」より
日本骨粗鬆学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」より

(4)栄養のアンバランス
骨は食べたものから作られる。骨の形成に必要なたんぱく質、カルシウム、ビタミンなどをきちんと摂取しないと良い骨は作れない。特にカルシウムは骨だけでなく、心拍や神経伝達など生命維持に重要な成分なので、命を保つことを優先に使われる。不足すると、まず骨が犠牲になると心得て。

(5)運動不足
丈夫な骨を作るためにはきちんと骨代謝が行われることが重要。骨は作るだけではなく、壊れることで作られる。そのためには、体に適度な負荷や刺激が加わることが重要。運動不足は肥満や筋力低下だけでなく、骨も衰えさせる。

骨粗しょう症が起こるわけと骨がもろくなる5つの原因。
  • 太田博明

    お話を伺ったのは

    太田博明 さん (おおた・ひろあき)

    婦人科医

    山王メディカルセンター 女性医療センター医師。日本抗加齢学会監事、日本骨粗鬆症学会元理事長、日本女性医学学会元理事・監事。専門は女性医療、骨粗鬆症、アンチエイジング医学。近著に『筋肉は若返る! ―尿もれ・骨折・フレイルは防げる! 治せる!』(さくら舎)。

『Dr.クロワッサン 何歳からでも骨は強くなる』(2020年3月28日発行)より。※プロフィールは掲載時点の情報です。

  1. HOME
  2. からだ
  3. 骨粗しょう症が起こるわけと骨がもろくなる5つの原因。

人気ランキング

  • 最 新
  • 週 間
  • 月 間

注目の記事

編集部のイチオシ!

オススメの連載