千葉大学医学部附属病院和漢診療科で、日々、患者を診察する並木隆雄さん。和漢診療科には市中の病院では治療が難しい患者や、大学病院の他科から紹介された患者が受診にやってくる。
患者のなかに、足は冷えが強く、頭はのぼせてつらいと訴える人が少なからずいるという。
「そんな患者さんに、私は『冷たいものは食べてませんね?』と尋ねると、異口同音に食べていませんと返事があります。そこで『まさかアイスクリームは食べてないでしょうね?』と質問を変えると、『えっ、アイスクリームを食べてはいけないんですか?』と身を乗り出す人が半分以上います」
重ねて、果物を食べているかと聞くと、たいてい食べていると答えが返ってくるという。冷え症がなければアイスクリームも果物も食べていいのだが。
「ここに来て、冷えてのぼせると言う人は100%冷たいものを食べています。私は何年もこうした訴えをする患者さんを診ていますから、体の中でどんなことが起きているかわかるんです。アイスクリームを食べるとどうなるか。0度近いものが胃袋に入ります。すると胃の温度が下がりますね」
人間は常に体温を一定に保つことで生命を維持しているわけだから、胃だけが冷たいままというわけにはいかない。
「体は胃の温度をもとに戻そうとします。そのためには血液を胃にしっかり循環させて温めるしかありません。ところが心臓から送り出された血液の3分の1は脳に行くことになっています。そうしないと脳貧血を起こして命に関わることになりますから」
血液の送り先で優先されるのが、冷えた胃と脳というわけだ。一方で、血液という「パイ」は限られているわけだから「体は足のほうへ流れる血の量を絞る」ことに。
「すると上半身は熱く感じ、下半身は冷えた状態になります。熱いからまた冷たいものを食べる。これが繰り返されると、体は胃を冷やされることを恐れ、冷たいものを食べていないときでも上半身を温めよう、温めようとするのです」
冷えのぼせが起きる、ひとつのパターンがこれだ。