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パン・ウェイさんの食養生の知恵。「私の料理は家庭薬膳。養生の原点は笑顔です。」

「不調は食べて治すの!」
笑顔でパン・ウェイさん。
パンさんのおばあちゃんは毎日食べ物には体を養い、癒やす力があることを聞かせてくれたそうです。
パンさんが受け継いだ食養生の知恵を紹介します。

撮影・岩本慶三 文・一澤ひらり

中国では常備菜は「常備薬」。中でも黒酢にんにくは万能です。

パンさんが毎日心がけるのは、5つの色の食材を食すこと。

「1日に5色を食べれば栄養のバランスがとれます。これはずっと守り続けているんですよ」

5色とは人間の五臓、肝・心・脾・肺・腎にそれぞれよいといわれる緑・赤・黄・白・黒の5色の食材のこと。四季折々、たとえば緑は春菊、小松菜などの野菜、赤は肉や魚の赤身、トマトや赤ピーマンなどの野菜、黄はかぼちゃ、みかん、柿などで、白は白米、長芋や大根などの野菜、黒は黒ごま、海藻、きのこ類など、5色に分けられる。

「今日は何色食べた?」1日3食に5色を摂る。

「私のおばあちゃんは食事の支度をする前に『今日は何色食べた?』と必ず聞いてきました。それで足りない色を補う献立を考えるのです。1日3食の中に5色が入っていればいいんです。たとえば、朝は緑の野菜と黄色の果物、昼は白米と赤い肉を炒めたもの、夜はひじきの煮ものといった具合に摂るんです」

5色を食べると、5つの栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)がそろってバランスがいい。

その中でもパンさん夫妻が毎日食べているというものがある。それは黒酢にんにく。

「日本では作り置きできるおかずが常備菜ですが、中国の常備菜は『常備薬』なんです。家族の体調に合わせて常備菜を選びます。それで体の不調を治すんですよ。黒酢にんにくもそうした常備菜のひとつになります」

にんにくをまるごと黒酢に漬けるだけなので、簡単にできるが効果は絶大。黒酢はアミノ酸がたっぷりで、にんにくには解毒作用があり、豊富なアリシンは疲労回復や悪玉コレステロールを抑えてくれる。この2つが相乗効果となってさらにパワーアップ。気力がみなぎり、風邪を予防し、血液をサラサラにして血栓を予防する。

「うちでは1日1粒、晩ごはんに食べています。血栓は夜寝ているときにできやすいので、血液サラサラの状態を保っていられるように夕食に摂るんです。天然のサプリメントですね」

パンさんは中国の黒酢を使っているが、いまは日本のスーパーでも手に入る。黒酢にあまりなじみがない場合は、使い慣れた米酢と合わせて自分の好みに調整してもいいという。

「にんにくも日本産と中国産では品種が違っていて、日本産のほうが大粒で実がしっかりしているので、半年ほど寝かせたほうがよく漬かります。生のにんにくの独特な刺激がなくなり、食べやすくなっていますよ」

黒酢に漬ける食材で、にんにくと並んで長年作っている常備菜は酢大豆だ。これも薬のように毎日食べているという。

「黒酢に蒸した大豆を入れて3週間ほど漬け込みます。私は毎日5~6粒そのまま食べています。血管を丈夫にして、血圧を安定させるので高血圧や婦人病の予防になるんですよ」

こうした常備菜にプラス、パンさんの元気の秘訣になっているのは、毎日たっぷり使う薬味。

「いつでも使えるように、生姜、にんにく、大根などを常備しています。こうした薬味野菜には解毒作用があり、血行もよくなって、体が温まります。私が育った北京ではどの家も日本人がびっくりするくらい、大量の薬味を使っていましたね」

春は冬にたまった老廃物や毒素を排出するために、解毒作用のある韮(にら)やにんにくを多めに摂る。一方、夏は冷房や冷たいものの摂りすぎで体が冷えやすいので、生姜で温める。秋から冬は大根や生姜、唐辛子を多めに摂って冬に備える。

<パン・ウェイさんの黒酢にんにく>

パン・ウェイさんの食養生の知恵。「私の料理は家庭薬膳。養生の原点は笑顔です。」

【材料】
にんにく …… 6~8個
黒酢 …… 360~400ml

【作り方】
1. にんにくの薄皮を剥く。
2. 清潔な瓶に1を入れ、黒酢をひたひたに注ぎ、常温で約3週間漬け込む。

* 途中でにんにくが緑に変色することがあるが、 そのまま漬ける。
* にんにくのサイズによるが、3カ月から半年漬けるとおいしくなる。

どう食べるか。健康は 日々の食事の積み重ね。

丹波のにんにくの在来種を黒酢に漬けた。「貴重なものですが、強いので1年半漬けています」
丹波のにんにくの在来種を黒酢に漬けた。「貴重なものですが、強いので1年半漬けています」

何を食べるかだけでなく、どう食べるかも大切だ。北京には1日3食の理想的な食べ方を示す「早吃好、午吃飽、晩吃少」という言葉がある。

「朝は良質なたんぱく質や炭水化物など栄養価の高いものを摂り、昼は好きなものをお腹いっぱい食べて、夜は少なめに済ませるという意味です。私もこれに即した食事を心がけていて、朝食と昼食で一日に必要な炭水化物を摂り、夕食は野菜料理メインで軽めにします。消化がスムーズで、寝ている夜のあいだに胃腸を休ませることができますからね」

朝、目覚めるとお腹が空いていて、栄養バランスのよい朝食をおいしく食べられ、しっかりと滋養になる。健康的な食のサイクルの中で暮らしている。

「今日の食事が3年後、5年後の自分の体を作ります。日々の食事の積み重ねを大切にしないと、病気にならない丈夫な体を作ることはできません。自分の体質や体調、折々の季節に合わせて、自然の恵みを取り入れておいしくいただく。これが健康の最大の秘訣ですね」

  • パン・ウェイ

    お話を伺ったのは

    パン・ウェイ さん

    料理研究家

    中国・北京生まれ。季節と体をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、現在は東京・代々木公園スタジオにて料理教室を主宰。著書に『毎日からだを調える中華スープ』(誠文堂新光社)など。

『Dr.クロワッサン 不調が消える、ふだん漢方』(2020年1月28日発行)より。

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