暮らしに役立つ、知恵がある。

 

“ゆるゆる漢方家”による、50代からのゆるゆる養生。

薬をのむほどじゃないけど、なんとなく調子が悪い。そんな季節の不調が毎日の暮らし方と食材だけで改善します。
毎日、店頭で健康相談を行い、漢方の理論をやさしく伝える“ゆるゆる漢方家”櫻井大典さんに聞きました。

文・土田由佳 イラストレーション・浜野ふみ子

更年期は病気ではなく思春期のようなもの。

女性の体は年齢を追うごとに、ホルモンのバランスが大きく変化します。40歳を過ぎたあたりから、ホルモンをコントロールする腎の機能が低下しはじめ、ホルモンの分泌量が減少。それによって誰にでもおとずれる体が変化するこの時期を更年期といいます。

更年期というと、まるで病気のように思ってしまう人もいるかもしれませんが、それは違います。思春期と同じように、人生のある時期を指す言葉。自分の体の変化を受け入れて、上手にその時期を過ごすことが大切なのです。

この変化にうまく体が順応せず、さまざまな症状が出る人もいます。これがいわゆる「更年期障害」です。やる気が出ない、気分が落ち込む、ほてりやのぼせなどの不快な症状から、不安、不眠などにつながるケースもあります。このような更年期障害の原因を漢方においては、栄養を運んで情緒を安定させる血の不足、ホルモンや水分代謝などをコントロールする腎の弱りとして捉えています。

ですから、更年期障害を軽くするためには、体にとって大切な血を増やし、腎を元気にすることが重要なのです。

よく寝て、まあまあ歩いて、ちょっと考えて食べる。

血を増やして腎を元気にすることは何も難しくありません。よく寝てまあまあ歩く、まずはこれ。

漢方では血は夜につくられると考え、最良な時間帯が午後11時から午前3時。毎日11時前の入眠を心がけたいものです。そして、歩くことは腎の活性化につながります。足の裏からの刺激が骨を通り、腎を元気にするのです。普段の暮らしに意識して歩くことを取り入れてください。

あとは、日々口にするものを見直してみることです。私たちの体は毎日の食べたものからつくられています。漢方では、自然界に合わせて体が変化し、季節によって関係する五臓(生命活動に必要な働きや機能を、肝・心・脾・肺・腎の5つに分類したもの)があると考えます。五臓は食べ物と密接につながっているので、食べ物の特性である五味・五性が体に働きかけ、五臓に作用を及ぼすのです。

といっても、難しく構える必要はありません。「辛味のある食材には発汗を促して、血行をよくする働きがあるんだな」というような知識を頭に入れておけば、毎日食べるものがちょっと変わるはずですから。

【季節と五味五臓の関係】

“ゆるゆる漢方家”による、50代からのゆるゆる養生。

{五味の働きと食材}

●酸味
自律神経を整え、汗や尿、便が必要以上に出ないように抑える作用や、ストレスを解消する働きがある。梅、レモン、みかん、りんご、いちご、トマト、酢、ローズヒップなど。

●甘味
ホクホクしたものに多く、滋養強壮効果がある。消化器系の働きをよくし、痛みを和らげる。米、大豆、鶏肉、鮭、かぼちゃ、さつまいも、にんじん、バナナ、ぶどう、ハチミツなど。

●辛味
肺の働きを活性化し、発汗を促す。血行も促進させるため、肩こりや冷えなどにも効果的。ねぎ、たまねぎ、にら、とうがん、にんにく、しょうが、しそ、こしょうなど。

●鹹(かん)味
塩辛い味のこと。水分代謝を高めるため、便秘の改善やリンパ腺の腫れなどに作用する。豚肉、いか、カキ、あさり、しじみ、はまぐり、昆布、わかめ、海苔など。

●苦味
体にたまった余分な水分や老廃物を取り、こもった熱を冷ます。神経を鎮静させる働きもある。レタス、ゴーヤー、アスパラガス、みょうが、ぎんなん、緑茶など。

{五性の働きと食材}

●寒性
強力に体を冷やす。しじみ、かに、きゅうり、なす、もやし、すいかなど。

●涼性
穏やかに体を冷やす。レタス、セロリ、大根、しめじ、そば、びわ、緑茶など。

●平性
寒熱に偏らないため、季節や体質を問わず、体を養う。キャベツ、じゃがいも、りんごなど。

●温性
穏やかに体を温める。イワシ、アジ、鮭、ねぎ、かぼちゃ、クルミなど。

●熱性
体を温める作用がもっとも強い。唐辛子、こしょう、山椒、シナモン、羊肉など。

“ゆるゆる漢方家”による、50代からのゆるゆる養生。

毎日取り入れたい簡単養生

(1) 寝起きは温かいものを口にする
人間は寝ている間に体温が下がり、起床時は体温が一番低い状態。体温より温かいものを体に入れて温める。

(2) 食後はゆっくり300歩歩く
体を動かすことで胃腸も動き、消化吸収と血行もよくなる。歩く時間がない場合は、椅子に座ったままで足踏みやかかと上げでもOK。

(3) 気づいたときに深呼吸する
漢方において、呼吸はエネルギーをつくると考えられている。鼻から空気を吸って、背骨を通って骨盤内に広がるイメージで深呼吸を。

(4) 気づいたときに肩をまわす
デスクワークなどでずっと同じ姿勢でいると、血管が収縮して血行が悪くなる。1時間に1回くらいは大きく伸びをして肩をまわそう。

(5) 湯船につかる
血は温めると流れやすくなり、体の隅々まで栄養と酸素を運び、不要物も排出しやすくなる。じんわり汗をかく程度のお湯に15分が目安。

  • 櫻井大典

    お話を伺ったのは

    櫻井大典 さん (さくらい・だいすけ)

    ゆるゆる漢方家

    「成城漢方たまり」 で健康相談を行っている。アメリカの大学で心理学を学び、帰国。国際中医専門員。『食べる漢方』(マガジンハウス)監修、主な著書に『まいにち漢方食材帖』(ナツメ社)など。

『Dr.クロワッサン 不調が消える、ふだん漢方』(2020年1月28日発行)より。

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