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77歳でホルモン補充療法(HRT)を継続中です。85歳まで続けたいのですが。【88歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

産婦人科医師の野末悦子さんに教わります。
  • 撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

Q. 77歳でホルモン補充療法(HRT)を継続中です。85歳まで続けたいのですが。

いつも野末先生の講座を楽しみにしています。私はいま77歳です。50歳前後に更年期に入り、幸運なことに理解あるドクターに出会い、HRTを始めました。それから27年間、治療を継続して、いまに至っております。体調はもちろん、気持ちも前向きになり、できれば85歳くらいまで続けたいと思っていますが、先生のご意見はいかがでしょうか。食事や運動にも気を配り、もちろん定期的に検査、健康診断もしております。(M・Nさん 77歳)

A.とってもラッキーでしたね。継続できるのであれば、続けてみましょう。

27年もの間、HRTを継続できているM・Nさん、とってもラッキーな方ですね。婦人科にかかることをためらって治療のきっかけを逃した女性。HRTを否定する医師に出会ってしまった女性、治療を始めても長く続けられなかった女性、いろいろな方がいる中で、M・Nさんはしっかり体調管理をしつつ、医師との信頼関係を築いているご様子。素晴らしいと思います。

ご質問の「85歳まで続けてよいか」について、一緒に考えましょう。

もしM・NさんがHRTを中止したとしたら、何歳であっても更年期症状は出ます。体調も落ちるでしょう。では、どう考えればいいか。

ひとつは、いま摂っているエストロゲンの量を減らしてみることです。1錠だったら、半分にする。服用を1日おきにする。1プッシュのジェルを、半プッシュにする。半減してみて、体調がどう変化するかみてみましょう。つらいようでしたら戻せばいいし、変わらないようでしたら減量して継続するのも手です。

私の患者さんの中には、10年、20年HRTを続ける方は大勢いらっしゃいました。もちろん私も、88歳になったいまも半量で継続中です。

問題は、この話が一般的な話題にはなりにくいということなのです。婦人科の医師でも、こんなに長期にHRTを続けることに反対の立場をとる人は少なくありません。

しかしながら、HRTにより、短いと言われている日本女性の健康寿命は確実に長くなります。

日本女性の平均寿命と健康寿命には差がある

平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味する。「健康増進としてのHRTという視点も必要になると思います」(野末さん)出典:厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会・次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料」

M・Nさんのかかりつけの医師がHRTの経験豊富な医師であったことがいかにラッキーだったか、おわかりですね。次の予約で、あなたから希望を伝え、意見を聞きましょう。そして、ご自身で判断します。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

HRTは何歳まで、という決まりはない。医師と相談で決める。(Dr.野末)

野末悦子

野末悦子 さん (のずえ・えつこ)

産婦人科医師

横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。

『クロワッサン』1032号より

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