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腸の調子がいいとは? 腸内環境と腸の活動力で決まる腸の健康。

腸と脳は互いに補い合う対等な臓器です。腸が自律神経を整える驚きの関係と、理想の腸の状態、健腸のメリットを順天堂大学医学部教授、小林弘幸さんに伺って紹介します。

文・韮澤恵理 イラスト・安ケ平正哉 撮影・青木和義

腸の調子がいいとは? 腸内環境と腸の活動力で決まる腸の健康。

腸が健康なら自律神経のバランスも整い、腸をケアをすれば、眠れない、イライラする、体が冷えるといった不調が解決するのは朗報です。

「腸の状態が悪くなる原因は2つに分けられます。1つは腸の活動力不足、もう1つは腸内環境が悪くなるためです。腸内環境は最近注目を集めているので、腸内細菌のバランスの乱れだと知っている人も増えていますが、腸の動きについてはあまり知られていません。でも、腸の動きが悪いことが不調の原因になっている人は案外多いんです」

腸は、胃から送られてくる消化された食物を分解して栄養素を吸収する小腸と、残りの水分を吸収し、便としてまとめて排出する大腸とで成り立っています。

「腸内で食物から便へと変化させながら徐々に肛門に向けて移動させるのが腸のぜん動運動です。この運動機能が衰えて、便をきちんと排泄できないのが腸の活動力不足ですね」

お腹をひねったり、腹筋を使うだけで、腸が活動するきっかけを作ることができます。

「これが腸ストレッチです。肛門の機能を司る骨盤底筋なども鍛えられ、腸の動きの悪さを簡単に解消できます」

小林さんがもうひとつすすめたいのが、腸を外から手で刺激すること。

「肋骨(ろっこつ)の下から骨盤にかけてお腹の表面近くにある腸は骨に覆われていないので、手でさわれる唯一の内臓です。お腹の上からつかんだりひねったりもんだりすることができます」

これで驚くほど腸の動きが活発になるそうです。

「コップ1杯の水を飲んで、胃の重みで結腸を刺激するという方法もあります。これは『胃結腸反射』といい即効性があります」

朝、コップ1杯の水を飲む習慣がいいというのは本当でした。

腸は脳の指令なしでも動ける!
腸は脳の指令なしでも動ける!

腸内環境は菌のバランス。 最善の腸内菌叢を保ちたい。

腸の健康を守るために大切なもうひとつの柱が腸内環境です。

「腸内には善玉菌と悪玉菌のほかに、優勢な菌に味方をする日和見(ひよりみ)菌がいます。この割合が、善玉菌2、悪玉菌1、日和見菌7がいい状態です」

そのための食事の仕方の要点は、腸内細菌を送り込むとともに菌が元気に活動するためのエサを補うことだそう。こうして消化や排泄がうまくいくことが健康にいいのですね。

「そう。でもそれだけではありません。腸では、セロトニンという神経伝達物質の95%が作られています。セロトニンは脳内では満足感や幸福感につながることから、幸せホルモンともいわれ、うつ病の治療などにも関わります。そのため、脳内で作られている印象が強いのですが、実はほとんどが腸で作られ、腸から脳への情報伝達はもちろん、体内のいろいろな神経伝達に役立っています」

セロトニンが十分あると脳と腸のやりとりもスムーズになります。

「さらに腸には免疫機能の約7割があり、腸が健康になれば、免疫力も確実に上がります」

腸を整えるメリットは計り知れないことがわかりました。

腸の構造とその働き
腸の構造とその働き

【代表的な日和見菌】
・バクテロイデス
・大腸菌(無毒株)
・連鎖球菌  など
 ↓
善玉菌が優勢なときは同じような働きをし、悪玉菌が優勢なときには一緒に有害物質を作ったりする。

代表的な悪玉菌】
・ブドウ球菌
・ウェルシュ菌
・大腸菌(有毒株) など
 ↓
腸内の腐敗を進め、下痢や便秘の原因を作る。免疫力を下げ、有害物質や発がん性物質などを作る。

代表的な善玉菌】
・ビフィズス菌
・乳酸菌  など
 ↓
消化吸収を促進し、腸の働きを整え、便秘や下痢を予防したり、免疫力を高める。ビタミンの合成も。

  • 小林弘幸

    監修

    小林弘幸 さん (こばやし・ひろゆき)

    医師

    順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。
    日本初の便秘外来を開設し、著名人のコンディショニング向上などにも関わる。自律神経の権威としても名高い。著書に『自律神経が整う時間コントロール術』(小学館)、『医者が考案した「長生きみそ汁』」(アスコム)など多数。

『Dr.クロワッサン 名医が教える腸ストレッチで、自律神経はよみがえる。」(2019年1月15日発行)より。

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