老化は自然なこと。でも、若くいたいとも思う。いまの自分がわかりません。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】
撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子
Q. 老化は自然なこと。でも、若くいたいとも思う。いまの自分がわかりません。
現在、49歳。30代から飼っている愛犬と気ままな独身生活を送ってきましたが、去年から犬の介護生活が始まりました。白内障がすすみ、認知症が始まった犬は、老化を静かに受け入れているように見えます。私自身も、そうありたいと思う一方で、高価なシワ予防のクリームを買っていて、矛盾した行動が我ながら可笑しいです。野末先生は、どうやって老いを受け入れていらしたのでしょう。(M・Uさん 49歳 会社役員)
A. 50代など、まだまだ。アンチエイジング、おおいにしましょう。
M・Uさん、49歳で「老いを受け入れよう」とお考えになるのは、少し早すぎる気がします。
私ごとですが、新型コロナウィルスの影響もあって、今年88歳になる前にクリニックを引退しましたが、考えてみれば65歳で定年後に開業。2つのクリニックを掛け持ちするなど、充実していました。80代になると、さすがに体力は落ちたと感じることもありましたが、経験知はあります。検診の技術も上手になり、「先生だと痛くない」と患者さんから感謝されたことを覚えています。
今や女性の平均寿命は87.32歳(2018年・厚労省)。100歳を超える人口は、日本では7万人を優に超えています。2007年に生まれた子どもの約50%が、107歳まで生きうるという研究も大きな話題になりましたね。中高年女性は、社会を担う働き手として、今もこれからも大いに期待されています。
寿命の延びに正比例して閉経年齢も延びればいいけれど、そうはいきません。面白いことに、閉経の年齢というのは、100年前も50年前も、大きく変わっていないのです。つまり、閉経後に生きる時間だけが、膨大に長くなっているわけですね。
そういう時代に、アンチエイジングを考えるほうが自然な流れでしょう。今では、「アンチ」と抗わず、ウェルエイジング、ウェルビーイングという表現がされることが増えてきました。オプティマルヘルスという言葉も、ぜひ覚えてくださいね。直訳すると「最高・最善の健康状態」で、今のその人にとって、最もいい状態を保つことを目指す概念です。
私は「今の状態」をよくするために、ホルモン補充療法(HRT)などの女性医療を上手に利用すればいいと思うのです。
HRTでコラーゲンも増加する。
HRTで皮脂の分泌も増加する。
人は老いるために生きているわけでも、死ぬために生きているわけでもありません。誰もが、したいことを実現するために生きるのではないでしょうか。そのために何が必要か。定期検診を含め整理してくださいね。
※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。
老け込む時間はない。今を「最高・最善」の状態にする努力を。(Dr.野末)
野末悦子(のずえ・えつこ)さん●産婦人科医師。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。
『クロワッサン』1026号より
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