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甲状腺機能低下症と診断されていますが、更年期症状もひどくて。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医
野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医

Q. 甲状腺機能低下症と診断されていますが、 更年期症状もひどくて。

疲れや倦怠感がひどく、2年前に甲状腺機能低下症と診断されました。ホルモン剤を飲んでからは、症状はよくなったのですが、ここ半年ほど疲労感が増して、体力、気力ともになくなってきています。友人から「もしかして更年期じゃない?」と指摘され、考えてみれば、月経はほとんどありません。治療を考えていますが、甲状腺ホルモンに加えて、女性ホルモンも補充してもいいものなのでしょうか。(F・Yさん 49歳 契約社員)

A. 2つのホルモン治療、問題ありません。よりよい選択をしましょう。

結論から申しますと、甲状腺ホルモン補充の治療をしていても、女性ホルモン補充療法(HRT)は受けることはできます。

そのご説明をする前に、まず、甲状腺の病気について、少しお話ししましょうね。甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる甲状腺機能亢進症、そしてF・Yさんのように分泌が低下する甲状腺機能低下症(橋本病)の2つがあります。そのうち、機能低下症は、更年期世代の女性にとても多く見られるんです。冷え、むくみ、抜け毛、無気力、記憶力低下、うつ症状、月経不順……これらの症状が、更年期障害の症状ととても似ているために「年齢のせいだわ」と思って、気づかずに、治療を受けていない人も少なくないと言われます。低下症ではまた、LDLコレステロール値が上がることも特徴ですので、覚えておいてくださいね。

甲状腺機能低下症の全身症状

さまざまな症状は、更年期障害や腎臓病、うつ病、認知症などに間違われることも。
さまざまな症状は、更年期障害や腎臓病、うつ病、認知症などに間違われることも。

甲状腺機能低下症は、文字どおりホルモン分泌が低下することで引き起こされるものなので、甲状腺ホルモンを補充するという根本治療が第一選択です。症状や体質、環境などによってホルモン量が変わってきますし、服用を途中でやめると再発することもありますので、かかりつけの医師のもとで定期的な血液検査を重ねて調整していくことになります。若い女性でもかかることがあって、妊娠中や授乳中でも、甲状腺ホルモン剤を服用することは可能なんですよ。

F・Yさんの今現在が、甲状腺ホルモンの量を調整しても症状が改善しないようでしたら、更年期障害の可能性は充分あります。お話にもあるように、ご自身も閉経が近いことを自覚なさっているようですから、一度、更年期外来などへいらして検査をするのはよいと思います。

ホルモン剤を2つ併用してもいいのかというご質問ですが、それぞれの役割は違い、相互作用はありませんので、併用しても問題ありません。

治療を始める前には、今かかっている医師に相談なさってくださいね。その医師の懇意の婦人科を紹介してもらうと、治療の連携もスムーズです。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

甲状腺機能低下症の診断の流れ

●問診・触診
首に触れて、甲状腺の腫れ状態を診る。他の病気の有無も問診で。

●血液検査
甲状腺ホルモン濃度、TSHというホルモンの検査をする。

●超音波検査
首を超音波機器でチェック。甲状腺の腫れや炎症の程度を調べる。

【甲状腺機能低下症と診断】

●治療
甲状腺ホルモンを補充する治療を開始する

初期は、自覚症状がない場合も多いが、放置しておくと悪化することも少なくない。

かかりつけの医師をよきアドバイザーにするのは自分。(Dr.野末)

甲状腺機能低下症と診断されていますが、更年期症状もひどくて。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師、久地診療所婦人科医。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などをへて現職。

『クロワッサン』1020号より

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