[頻尿・尿もれ]うつの原因にもなる頻尿・尿もれは自宅トレーニングで改善します。
文・石飛カノ イラストレーション・田中麻里子
1日の適正な排尿回数は4〜8回。それ以上でもそれ以下でもよろしくない。とくに1日に9回も10回も排尿する人は明らかな頻尿。また、トイレに行く前に尿もれしてしまうのが尿失禁。
関口由紀さんによれば、
「放っておいても死ぬことはないけれど、生活の質が下がる病気をQOL疾患と言いますが、頻尿や尿もれはまさしくそれ」とのこと。
まず尿もれには大きく2つの種類がある。ひとつは咳やくしゃみをしたとき、運動時などにもれてしまう腹圧性尿失禁。もうひとつは、急に強い尿意を感じて、我慢できずにもれてしまう切迫性尿失禁。
「尿もれの有無にかかわらず、切迫した尿意を感じるのが過活動膀胱という病気です。過活動膀胱のうちの6割くらいの人に切迫性尿失禁が見られます」
尿もれのない過活動膀胱の人には当然、1日に何度もトイレに駆け込む頻尿の症状があるという。
尿もれには2つの種類がある。
骨盤底筋トレーニングと外陰部のケアで改善をはかる。
さて、これらの頻尿や尿もれの原因はさまざま。加齢が原因のこともあれば、何らかの病気による神経性の原因が隠れていることもある。その中で最も多いと考えられる原因が、“骨盤底障害”と呼ばれるもの。
「骨盤底は恥骨から尾骨に至るひし形の組織で、骨盤底筋群、靭帯、皮下組織によって構成されています。この部分がもともと弱いことで頻尿や尿もれが起こることがあります。そうでない場合でも骨盤底は出産でダメージを受け、さらに40代で筋肉量が減り、50代で粘膜が弱くなり、年齢とともにどんどん障害のレベルが高くなっていくと考えられます」
年齢で弱くなる骨盤底とは?
骨盤底障害が年齢とともに進んでいくのは仕方がないこと。でも、トレーニングによって改善をはかることができる。その方法は、お腹とお尻の力を抜いて肛門と腟・尿道をそれぞれ締めて引き上げる骨盤底筋トレーニング。1日に30〜50回行うことで確実に効果が期待できるという。
もうひとつの方法は、外陰部のケア。というのは、閉経による粘膜や皮下組織の変化による下半身のトラブルが、頻尿や尿もれを悪化させることが知られているからだ。
「閉経から5〜10年くらい経つとGSM(閉経後尿路生殖器症候群)といって、外陰部の違和感、排尿トラブル、性交痛などの問題が出てきます。2人に1人はいずれかのトラブルを抱えているとも言われています。GSMの原因のひとつは乾燥。入浴後、外陰部に保湿剤を塗るなどして対処することも、頻尿や尿もれの改善に繋がります」
骨盤底筋トレーニングと外陰部の保湿で70〜80%の頻尿や尿もれは改善するという。これは希望の持てる話。
「頻尿や尿もれによって外出をしたくなくなる、あるいは大好きだった趣味をしたくなくなるということはよくありますが、これは抑うつ症状のひとつ。自宅トレーニングで改善しない場合は、女性泌尿器科や婦人科でプロの指導を受けましょう」
まずは諦めずにセルフケアを!
骨盤底筋トレーニングで尿失禁対策を。
関口由紀(せきぐち・ゆき)さん●女性医療クリニックLUNAグループ理事長。横浜市立大学大学院医学部修了。横浜市立大学医学部泌尿器病態学講座客員教授。2005年に開業。www.luna-clinic.jp
『クロワッサン』1006号より
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