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『純情ヨーロッパ』『人情ヨーロッパ』たかのてるこさん|本を読んで、会いたくなって。

旅に出ると、自分の欠点も長所に変わる。

たかの・てるこ●1971年、大阪生まれ。地球の広報、旅人、エッセイスト。映画会社・東映で18年間、TVプロデューサーを務め、2011年に独立。ベストセラーとなりドラマ化もされた『ガンジス河でバタフライ』(幻冬舎)ほか著書多数。

撮影・森山祐子

 爆笑珍道中が帰ってくる。たかのてるこさんが5年ぶりの海外旅エッセイを出すと聞いて、ワクワクが止まらなかった。“地球の広報”を自称し、60カ国以上を旅してきた彼女の今回のテーマは、約2カ月のヨーロッパ鉄道旅。「本当は4冊くらいにしたかった」という濃密な内容を、前編・後編の2冊にぎゅっと詰め込んだ。

「もともとヨーロッパはキザでお高くとまったイメージがあって苦手だったんです。それを克服するには荒療治だ、21カ国ドーンと行ってしまえと。でも1カ国1〜4日の短期滞在だと消化不良を起こしかねない、そう思って1カ国1ミッションを自分に課しました」

 フランスでは「ヌーディスト・ビーチで真っ裸になる」、ボスニア・ヘルツェゴビナでは「世界遺産、スターリ・モストからダイビング」。ミッション達成のため奔走する姿は、純粋、そして強引だ。

「私、世界一落ち着きがないんです(笑)。だから旅先で皆、こいつ大丈夫か?って心配してくれるのかも。会社員の頃はそれがコンプレックスでしたが、場所が変われば欠点も長所になる。旅に出て何でも好意的に誤解できるようになると、生きるのが楽になりますよ」

 もちろん、笑えるエピソードばかりではない。国の福祉や戦争のこと、宗教観、恋愛観。旅先で出会った人と繰り広げられる会話は真剣で、切実で、ときに深刻だ。
「ボスニアで出会ったダイビングの師匠・デイビットのことは今でも思い出しますね。彼のおかげで、後編『人情ヨーロッパ』の副題が『人生、ゆるして、ゆるされて』になった。彼の重い過去を聞いて、私も思わず幼少期のトラウマや人間不信について話すうちに、憎しみから解放されて、ゆるし、ゆるされることこそが生きていくことだと思えたんです。彼は、魂レベルで語り合えるソウルメイト。不思議な縁を感じました」

 たかのさんと共に、楽しみ、悩み、息切れしながら珍道中を爆走する。こんな痛快な旅エッセイは他にはない。ところで、ヨーロッパの苦手意識は克服できました?

「ええ、気取っているように見えても、あれが彼らの自然体(笑)。私が色眼鏡で見てたのかも。旅をすると、異国の良さ、日本の良さ、そして自分の良さにも気づける。だから旅は万人におすすめです」

ダイヤモンド・ビッグ社 1,280円
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