前回に続き、「感覚年齢」を問う特集からの名言です。数人の女性のインタビューが掲載されていますが、そのなかで目を引いたのが、舞踊研究家の渡部伊曽子さんの言葉です。
この言葉は、渡部さんが88歳で亡くなったというお母さんを見ていて感じたことだと語ります。老人性白内障を患い、目が不自由になっていたにもかかわらず、絵を描くのが好きで、クレヨンや墨を使ってせっせと描いていたお母さん。習ったことは一度もなくても、我流で自由に表現し、毎日を楽しんで生きる姿に、若々しくいるための秘訣を見出したのです。
たしかに私の経験からいっても、70代、80代を超えて元気に活躍している女性に取材すると、みなさん総じてパワフル。「あれがしたい」「あそこに行ってみたい」と好奇心旺盛です。病気になったり、体力が衰えてきたりすると、誰しも気持ちも後ろ向きになりがちですが、それを吹き飛ばすだけの楽しいこと、夢中になれることを、状況に応じてみつけられるかが大切なのだとしみじみ思います。
渡部さんのインタビューで、もうひとつ心に残ったのは、以前聞いたという「伝統というのは、模倣することではなく、追求していくものだ」という言葉。人間がつくりだす文化もまた人と同様、前向きな力によって生気あふれる魅力を放つようになるのでしょう。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。