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一刻一刻を大切な時間だと思うと、暮し方も変わってきます――内藤恒方(建築家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、建築家の言葉から、暮らしへの向き合いかたを考えてみましょう。

文・澁川祐子

1978年2月号「狭い1K 2K 3DKをどう改造するか?」より
1978年2月号「狭い1K 2K 3DKをどう改造するか?」より

一刻一刻を大切な時間だと思うと、暮し方も変わってきます――内藤恒方(建築家)

狭いスペースのなかでどう空間をつくり、快適に暮らすか。日本の住まい事情を鑑みるに、それは永遠のテーマかもしれません。

約40年前のクロワッサンでは、実用的な空間活用法から、専門家へのインタビューまで幅広く住まいかたを提案。そのなかで目を引いたのが、建築家であり造園家でもある内藤恒方さんの言葉です。

<自分の本当に好きな物を見つけて買っていくという姿勢を大切にしてほしい>と語る内藤さん。いまの家は、やたら家に物を持ち込みすぎているのではないかと問いかけます。

たとえば台所でも、我が家には皿が何枚あればいいか、鍋がいくつあればいいかということがわかっていない家が多いといいます。結局はあちこちにしまい込んで、実際に使う段になるとどの皿にするかわからなかったり、手近な皿で間に合わせたりすると、なかなか耳の痛い指摘をしています。

<自分が大切に思い、実際に使うものだけが最小限あれば、ぼくはそれでいいと思いますね。ただ、そのためには、自分というものをしっかり認識し、発見し、毎日の生活様式をちゃんと知る必要があります>

若いうちほど「いまの住まいは、仮住まい」と考えがちですが、人生にはかぎりがあります。今日この瞬間を豊かに暮らすことが大切であって、そのためには他人の家がどうだろうと気にせず、等身大の自分の生活をみつめること。そんなメッセージがこのひと言には込められています。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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