猫好きな妻のためにアレルギーをひた隠しにしていた夫の話。書名になっているのは、渡辺さんが子連れで出かけた時に、駅や街で途方にくれていると、普通のサラリーマンが快くベビーカーを運んでくれたり、タクシーを停めてくれた体験談がもとになった一章だ。
「本当に自分で感じたことだったんです。その人たちが家庭で協力的な夫かどうかはわからないけれど、そういうやさしい一面をあなたの夫は持っているということに気づいてほしくて」
渡辺さんが取材した中でも、妻から夫への愚痴はたくさん。ただ、そこに男の立場など、別の見地を織り交ぜてくれるのはさすが脚本家。浮気の疑いも、相手を思いやっての隠し事が原因の誤解かもしれない。夫婦関係だけでなく、ママ友のグループから孤立してしまうケースや、結婚がきっかけで友情の形が変わってしまう女友だちなど、いろんな気持ちの機微が描かれ、切実に胸に迫る。底辺に流れるのは、人間への渡辺さんの真っすぐでやさしい視線だ。