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『みんなの朝ドラ』木俣 冬さん|本を読んで、会いたくなって。

きまた・ふゆ●東京生まれ。ルポルタージュ、インタビュー、レビュー、ノベライズなどを手がける。『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち』など著書多数。『まれ』(’15年)以降、エキレビ! は毎日更新中。

撮影・谷 尚樹

なんていいタイトルだろうか、『みんなの朝ドラ』。毎朝(月~土)8時から放映されるNHK連続テレビ小説。職場で学校で、家族や友人と今日の朝ドラについて語り合う楽しさといったら!

「そうなんですよね。私ももともと『あまちゃん』(’13年放映)のレビューを毎週『エキレビ!』というサイトに書いていたのが始まりで。それがご好評いただき、ムックに再録され、さらに新書で書き下ろしということに……」

演劇、映画、ドラマ等の分野でフリーライターとして活躍している木俣さんの好きが昂じて誕生した本書には、漫然と見ていたのでは気づかない、綿密な取材をふまえた上での深く鋭い考察が満載だ。大正から昭和にかけての戦中戦後を舞台にした作品が多い理由、受け継がれていく〈明るく・元気に・さわやかに〉の精神、そして『ゲゲゲの女房』(’10年)がもたらした新しい風。

「水木しげるさんの妻・武良布枝さんのエッセイが原作で、ドラマにも妖怪のキャラクターが登場したりしたせいか、漫画やアニメが好きな新しい視聴者が増えました。自分の好きなシーンをイラストにして、ネット上にアップしたり。この盛り上がりの頂点が、やはり『あまちゃん』で、その絵は『あま絵』と呼ばれていました(笑)」

木俣さんはこれ以降、SNSの隆盛に伴い、朝ドラはみんなで語るものになったと指摘。本書でも『カーネーション』(’11年)、『とと姉ちゃん』(’16年)など以降の作品を多く取り上げている。

「でも、60年近く続く朝ドラの歴史を思うと、やはり絶対王者『おしん』(’83年)ははずせません」

視聴時にはそれほど認識しなかった『おしん』のメッセージ性の強さに驚かされる、と言う。

「戦争や社会をはっきり批判している。またそういうメッセージを、おしんが出会う王子様のような男性たちを通して表現しているんです。本当に脚本がうまい。でも橋田壽賀子先生は、こんなにもテーマ性を強く持って書かれていたんだと。『おしん』はあまりにも有名な朝ドラですが、やはり絶対王者たる風格がある力強い作品なんだと再確認しましたね」

主婦向けに始まった朝ドラが、『私の青空』でシングルマザーを、『カーネーション』で不倫を、『とと姉ちゃん』でおひとりさまを。ヒロインの在り方をたぐれば、女の生き方も見えてくる。やっぱり、『みんなの朝ドラ』、語りは尽きません。

講談社現代新書 840円

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