森田 剛さんが語る、映画『見上げてごらん』──思いもしないいいことが起きる。だから人生は面白い。
撮影・天日恵美子 スタイリング・松川 総 ヘア&メイク・AMANO 文・黒瀬朋子
芯の強さが滲むような役を多く演じてきた森田剛さん。最新映画『見上げてごらん』では一転。大御所マンガ家を支えるアシスタント、人生に迷う42歳の土屋輝一を愛らしく演じている。
「土屋はマンガが大好きなんですよね。僕も年齢が近いので、彼の満たされない気持ちやくすぶっている感じもわかるところがあり、興味を引かれました」
土屋は妻と別居中。中学生の娘とファミレスに行ったり、部屋で洗濯物を畳むなど、生活感あふれるごく普通の男を森田さんが演じているのも新鮮だ。以前演じたことのある、人を殺すような闇を抱える人物と土屋のような庶民、演じる上で違いがあるのかと尋ねると、「ないと思う」と森田さんは答えた。
「犯罪者もマンガアシスタントも、心の中で起きている感情の揺れは一緒です。たとえば娘のことが心配でたまらないというのは土屋の中ではものすごく大きなことですから。だから普通の人の役という感覚は特になかったです。土屋はけっこう変わってますしね(笑)」
アシスタントの後輩はマンガ家デビューを果たし成功。このままでいいのかと土屋は生活と夢の間で迷う。
「宣伝コピーにもなっている『夢を叶えるってそんなに大事?』は土屋のセリフですけど、森本晶一監督自身の言葉でもあるから強く響きますよね」
本作は、是枝裕和監督率いる映像制作集団「分福」の森本晶一さんと佐藤快磨さんのW監督作品。森本さんが企画と脚本を担い、20年近い助監督時代の経験を投影したそうだ。40代は人生に迷う世代なのかもしれない。
「みんな焦ったりするのかもしれないけど、年齢とか気にしなくていいと思います。僕も40代だからとか、意識したことはないです」
ただ、時の流れの速さは、年々実感しているらしい。
「これからもっと速くなっていくのでしょうね。でも、年を重ねると、思いもしないいいことが起きるので、人生面白いなと思います。予想外に美味しいものを食べられたとか、動物たちと家族になるとか。いろいろなタイミングが重ならないと出合えないものばかり。今後もそういうものを楽しみながら生きていけたらいいなと思います」
俳優の仕事もそうだ。毎プロジェクト、世代も出身も違う人々との新たな出会いがある。
「初めましての人がほとんどなので、新鮮に感じられますし、緊張感もある。また、作品が終われば別れていく、永遠じゃない、刹那な関わり方も自分の性分に合っているのかなと思います」
『クロワッサン』1176号より
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