被災後、何にお金がかかる? 現金はどれくらい必要? お金と防災のプロの2人に聞いた、避けては通れないお金と保険の話
イラストレーション・草野かおる 文・西山美紀
右:風呂内亜矢(ふろうち・あや)さん ファイナンシャルプランナー。宅地建物取引士試験合格者で不動産にも詳しい。テレビ出演や雑誌での監修等、多方面で活躍中。著書に『届け出だけでもらえるお金 戻ってくるお金』(宝島社)等。
左:草野かおる(くさの・かおる)さん イラストコラムニスト、防災士。PTAや自治体での防災活動を活かし、講演やメディア出演などで活躍中。著書に『大切な「いのち」と「お金」を守る マンガ 防災&防犯ブック』(ぴあ)等。
災害後、何にお金がかかるのか?
平常時はあまり想像がつかないが……もし災害にあったら、どんなことにお金がかかるのか?
草野かおるさん(以下、草野) 大きく分けて3つのフェーズでお金がかかります。1つ目が被災直後の「命を守る」フェーズ。飲み物や食料、簡易トイレなど、備蓄が足りなければ購入することに。一時避難の交通費も必要ですね。
風呂内亜矢さん(以下、風呂内) その後、さらに自宅避難や避難所生活が続くと大変ですね。
草野 はい、それが次のフェーズ2ですね。着替えや家電、子どもの学用品など、生活を続けるための費用のほか、親せき宅への移動費やホテル代がかかります。さらに、その後の3つ目が「復旧・復興」です。住宅の修繕や建て替え、車の買い替えなど大きなお金が必要になる段階に進みます。
風呂内 公的支援もありますが、まずは自助努力が大切ですね。
草野 そうですね、状況が整えば、支援金や家電購入の際の補助などもありますが、支援を受けられるまでに時間がかかるうえ、金額には上限がありますしね。
風呂内 支援を受けるには、自治体の窓口で「罹災証明書」を申請(①)したいですね。マイナンバーカードを使ってマイナポータルから発行ができる場合も。
草野 罹災証明書は、公的支援を受けとるためのいわば“パスポート”です。被害を受けた自宅や家財の写真を撮り、何か購入した際には領収書を保管しておきましょう。
風呂内 自宅の地域に「災害救助法」が適用されたか(②)も重要。災害の規模が小さいと適用されず、支援がない場合があるので要注意。いずれにしても被害があれば「罹災証明書」を申請しましょう。
現金はどれくらい必要?
最近はキャッシュレス決済が増え、「現金はあまり持っていない」という人も多いもの。防災の視点では、現金はどれくらい準備しておけばよいの?
草野 自然災害の現場を取材してきた経験からすると、お財布には2万円ほど、自宅には一人暮らしなら2万円、家族4人住まいなら10万円ほどあると安心でしょう。千円札や小銭は意外と必要になるので、ぜひ入れておきたいですね。災害時には現金決済が基本になります。
風呂内 私も1週間分の食費程度の現金を防災リュックに入れています。普段はキャッシュレスを積極的に使っていますが、非常時には現金が必須ですね。停電や通信障害でキャッシュレスの決済端末が使えないこともあるので要注意です。
草野 発災直後は支援物質がすぐ届くとは限らず、必要なものを自分で購入することになります。品薄だったり、交通費をかけて遠方に買いにいくことになったりと、予想外の支出も増えます。
風呂内 避難生活が長引けば、さらにお金が必要になりそうです。
草野 はい、ホテルの宿泊費や着替えの購入のほか、ペットを預けたり、レンタカーを利用したりと、普段の生活以上に支出が増えます。まずは自分で備えておくことが大切です。
風呂内 手元の現金が足りず、銀行口座から引き出したいときもあるでしょう。災害時には、通帳やキャッシュカードなどを紛失した場合でも、本人確認ができれば、金融機関が定める手続きにより、一定額を引き出せる特例措置が適用される場合があります。現金は紛失すると取り戻すことが難しいですが、銀行にあるお金は記録があるので安心ですね。
草野 銀行には、預貯金をどれくらい準備しておくと安心ですか。
風呂内 生活費の3~6カ月分、子育て世帯や自営業の方なら半年~1年分の預貯金が目安です。避難生活や生活再建の際の大きな支えになるはずです。この“生活防衛資金”は、災害用だけでなく、さまざまな万一のときのためにぜひ備えておきたいですね(③)。
草野 被災により出費がかさんだ際に、税金で少しでも取り戻す方法があるんですよね。
風呂内 はい、住宅や家財に被害を受けた場合に、所得税が軽減される「雑損控除」(④)や「災害減免法による所得税の軽減免除」(⑤)があります。この2つの併用はできないので、有利なほうを選んで確定申告をします。詳しい条件や手続きについては、国税庁のサイトや税務署で確認すると安心ですね。
まずは自治体の窓口へ!
災害発生後は、自分の住む地域に「災害救助法」が適用されたかを確認しよう。適用されると、避難所の開設や住宅の応急修理、生活必需品の支給などの支援が受けられる可能性がある。小規模な災害では適用されないこともあるので注意。自治体や内閣府のサイトで確認できる。
災害時に備え、自宅や銀行にお金を置いておきたい目安は上記のとおり。ただし、万一銀行が破綻した場合は、預貯金1000万円とその利息までしか保護されないため、それより多く預けたい場合は、銀行を2つ以上に分けよう。
災害により住宅や家財、自家用車に被害を受けた場合、一定の条件を満たせば所得税や住民税が軽減される制度。確定申告が必要になる。雑損額や保険金額によって控除額が異なるため、領収書や写真などを保管しておき、税務署・税理士など専門家に相談を。
災害により住宅や家財に大きな被害を受けた場合、その年の所得合計額が1000万円以下などの条件を満たすと、所得税が軽減・免除される制度。例えば年収700万円で、所得税が27万円の人の場合、所得税額の半分の13.5万円が減額される。
『クロワッサン』1172号より
広告