【俳優・毎熊克哉さんに聞いた】目に見えないものほど、案外人生を動かしている──映画『見えない娘 THE INVISIBLES』
撮影・五十嵐一晴 スタイリング・カワサキタカフミ ヘア&メイク・MARI 文・長嶺葉月
生まれながらに透明人間の末娘を育てるシングルファザーが、三姉妹を連れて旅に出る。映画『見えない娘 THE INVISIBLES』は、一見すると奇想天外な設定のロードムービー。主人公・学を演じた毎熊克哉さんが、まず惹かれたのは設定そのものの面白さだった。
「透明人間である末っ子の存在を隠しながら家族で東京を目指す、というログラインだけで心惹かれました。どんな冒険が始まるんだろうとわくわくしたのを覚えています」
演じた学は、いわゆる「頼れる父親」ではない。心配性で、あらゆる事態を想定しながら生きている人。
「子どもたちを守るために、いつも何かに追われています。その必死な真面目さゆえに、子どもたちはあり得ない状況を自然に受け入れているのに、父親だけがなかなか馴染めずにいる。人を強い、弱いで語るものでもないと思うんですけど、少なくとも学はわかりやすく“強い人”ではないんです。でも、大事なもののためには逃げないし、目の前の問題に向き合うことを諦めない」
撮影前、毎熊さんには不安があった。三姉妹を演じる少女たちと、本当に「家族」になれるのかどうか。
「子どもたちと実際に時間を重ねるうちに、気づけば僕を父として存在させてくれました。役は一人では完成しなくて、人と接する中で生まれていくものがあって、その空気感や体温のようなものが、作品の質感そのものにつながっています」
毎熊さん自身が日頃から大切にしている「見えないもの」とは? そう問いかけると、返ってきたのは「縁」と「勘」という言葉。
「どちらも目には見えないけれど、かなり信じています。人との出会いも、仕事もそう。もっと言えば洋服ひとつにしても、『コレだ』という感覚を大切にしたい。経験や知識も判断材料になるけれど、振り返ると理屈だけではない選択に導かれてきた実感があります。ときには経験が邪魔をして決めつけてしまうこともある。でも最後はやっぱり自分の感覚に身を委ねていきたい。ただ、縁がなかったものには執着しません。執着してしまうと、純粋な縁まで逃がしてしまう気がするから」
縁も、勘も、家族とのつながりも目には見えない。でも、毎熊さんの話を聞いていると、人生を動かしているのはむしろそうしたものなのだと感じる。だからこそ、この映画を子どもたちに届けたいのだろう。
「子どもの頃に観た映画は、その後の人生に何かしら残り続けていく。この作品を通して、少しでもその人の価値観や想像力を豊かにするものになったらうれしいですね」
『見えない娘 THE INVISIBLES』
生まれつき透明人間の三姉妹の末娘・ひかり。その秘密を抱える父と娘たちが、祖母の入院をきっかけに東京への旅に出る。道中で困難に直面しながらも、家族の絆を確かめていく姿を描く。
出演:毎熊克哉、鈴木凜子、近藤華、矢山花、寺島進、余貴美子
8月28日(金)より東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
『クロワッサン』1170号より
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