心地よく生きるケアを支える商品開発と、地域ごとの実践──森田敦子さん 植物療法を取り入れた介護(2)
撮影・村上未知 構成&文・殿井悠子
植物療法士の森田敦子さんが開発したケアプロダクトシリーズ「MESOINS(メソワン)」は、植物の力を看護・介護の現場に活かすために生まれた。むくみをやわらげたり、乾燥しやすい皮膚にはマッサージオイルを使う。おむつ交換時には陰部を泡洗浄し、空間を整えるルームスプレーを吹く。生活を整えるためのケアに近い。
「商品開発のきっかけは、広島の医療法人社団 八千代会の理事長である姜慧(カン・ヘ)さんとの出会いでした」と、森田さんは振り返る。
姜さんは、がんで闘病中だった母親が森田さんの施術を受け、苦痛がやわらぐ様子を目の当たりにしたことから、看護・介護現場にフィトテラピーの必要性を実感。2018年からは、1300人以上のスタッフと約1700人の利用者を抱える同グループの現場で、メソワンシリーズの使用が始まった。その結果、ボディウォッシュ〈ボディ アワ〉を使用することで、陰部洗浄の時間が従来の4分の1に短縮されたほか、皮膚の㏗や湿潤度、汚れの落ち方などでも、高い効果が確認されたという。共同研究を行う東京大学の研究者からは、「長年大きく変わらなかった陰部洗浄に着目したことも素晴らしいが、ケア自体がいま、変わろうとしているんですね」と言われた。
森田さんや姜さんたちは、ケアを受ける人の表情がやわらぐことや、看護師や介護士が少し余裕を持って利用者に向き合えることも見ている。姜さんは、「患者さんや利用者さんの笑顔、ケアする側の充実感を考えると、メソワンがもたらす効果は計り知れない」と話す。
こうして現場での実践を重ねた先に、森田さん自身が始めたのが、ケア拠点「ブランマグノリア」だ。愛知・豊橋では、予防と生活維持も含めてフィトテラピーを取り入れながら、指定訪問看護ステーションを展開。山間地域の長野・大町では、開かれた学びの場からスタートし、“サービスを受ける”だけでなく、自分たちでケアを学び、担う流れを作ろうとしている。さらに東京では、医療と介護などの悩みを抱える本人と家族に寄り添い、コンシェルジュ的な役割を担うサービスを準備中だ。この地方都市、中山間地域、大都市という3つの実践には、今の日本が抱える介護や医療の課題が凝縮して映し出されている。
森田さんは、全国一律のケアを広げたいわけではない。“心地よく 生きるケアを”という考えに共感した人たちが、それぞれの土地に合った形を作っていけばいい。その土地の暮らしの中からケアを立ち上げていくことが、本当の意味で必要な支えにつながると思っている。(続く)
『クロワッサン』1168号より
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