夫婦の寝室だった和室を改装して小さな菓子店に【自宅で夢を叶える住まいの工夫①】
撮影・黒川ひろみ 文・長谷川未緒
「何をやるかは決めていなかったのですが、いつか自分で商売をしたいと、ずっと思っていました。自分にできることを考えたときに、娘と息子のためによく作っていたパンやお菓子なら仕事にできるのではと思い至り、店を始めることにしました。パートでコツコツ貯めた資金のめどが立ったことと、長女が独立したことを機に『やりたい!』と思ったら止まらなくなって」
そう語るのは『おやつ工房ひびのや』を営む渡邊裕子さん。当初は駅前で店舗を借りることも考えたが、天然酵母のパンは発酵に時間がかかるため、いつでも様子を見られるようにと、自宅の一部を店舗に改装することに。決意の固さから、夫もすぐに受け入れてくれたという。
庭と通りに面していた掃き出し窓を店の入り口にし、夫婦の寝室と居間だった二間続きの和室は、手前を店舗に、奥を工房に作り替えた。白木だった柱や天井は茶色に、ふすまは白に塗り替え、もともと好きだった古民家風の空間に。ショーケースなどの什器はアンティークショップやネットオークションで購入し、お菓子の型やトレイは手持ちのものを利用、初期費用をおさえて2017年に開店した。
「当初は順調でしたが、3カ月もすると客足が鈍りまして。駅に近いわけでもない住宅街にありますから、予想はしていたんです。そこで知り合いに声をかけ、イベントを主催して地域の人に店のことを知ってもらい、集客につなげました」
自宅を店舗にした最大のメリットは、作業をしたいと思ったときにすぐ取りかかれること。天然酵母の発酵具合を夜中にチェックしたり、家事の合間に商品の袋詰めをしたり。わざわざ店舗まで出向かなければならなかったら、面倒で続かなかったかもしれないとも。
自分の店を実現した渡邊さんは、2022年に次なる夢だった子ども食堂「コミュニティ食堂なないろりんご」を近隣のレンタルスペースを借りて立ち上げた。
「職住一緒が私には向いているので、ゆくゆくは自宅と店と子ども食堂を同じ場所にできたらと目標にしています」
『クロワッサン』1167号より
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