今も未来も、生活を楽しむ理想の家
イラストレーション・大庫真里 文・小沢緑子
家を考えることは、これからどう生きたいかを考えること
住宅は、その人の背景(暮らしや衣食住のスタイル)そのものという、一級建築士の田中ナオミさん。設計の前に住み手の暮らしをヒアリングするが、「それぞれにドラマがあり、全員違って、全員濃いです。自分らしい住まいを考えたいとき、『家で何をしているときが幸せ?』と探ってみてください。指針が見えてくると思います」。
家を整えていく第一歩として、心の整理も重要、とライフオーガナイザーのかみて理恵子さん。
「ただ心は目に見えないので、家の中のモノと向き合うことから始めるのがおすすめ。モノは自分の意思で家に連れ帰ったものですし、したいことが反映された部分。『これまだ必要?』という視点で俯瞰すると自分とはもう縁がないものがわかってきますし、今後どう暮らしたいかも整理されます」
50代は、いったん立ち止まって家に対する思考を整える時期
かみてさんは20年ほど前、夫が50歳、自身が41歳のとき、「老後は都心へ」との夫の提案で、郊外の2LDKから都心の1LDKのマンションへの住み替えを選択。優先順位は立地、利便性、間取り、窓からの景色だった。
「誰にも当てはまる条件ではないですが、ひとつ言えるのは第2の人生の住まいを考えるなら、体力や気力がある40代50代のうちに選択肢を絞っておくほうがいいと思います。60代以降でまた変えたくなっても、家に対する思考を一度整理した下地があるので柔軟にラクに対処できます」(かみてさん)。
老後の住まいは心配のあまり、あれもこれもと設備も先回りしたくなるが、「手すりだって最初から家じゅうではなく、必要に応じてリノベすればいいんです。一生に一度、間違えちゃいけないと気負いすぎないで」(田中さん)。
自分だけでなく家族みんなが、今も未来も、楽しく暮らせる家に
考えだすと次々と要望がでてきてしまう住まいだが、「玉ねぎの皮を剥くように1枚ずつはがして、最後に残る芯の部分が重要。私自身は『家族が元気でハッピーでいられる家』が芯だと思っています。今後も一緒に生きていくパートナーや家族と楽しく生活の車輪を回していくために、互いに最高の居心地でいられる家のイメージを共有しておくことを忘れずに」(田中さん)。
中には定年を迎えた夫とふたりきりで過ごす家時間に不安を覚える人もいるが、「パーソナルスペースの問題というより、『夫と一緒に何かをすることに慣れていない』のが原因ではと思います。たとえばまだ40代50代の現役世代のうちに、夜10分でも何か飲みながら夫婦で話ができる関係を、今から構築していくことも大切だと思います」(かみてさん)。
『クロワッサン』1167号より
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