『君の不在の夜を歩く』窪 美澄 著──高校時代をともに過ごした5人のその後
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
高校時代から親しい沙耶、健太、倫子、達也、菜乃子。三十八歳になって菜乃子が自死したことから、それぞれの人生に波紋が広がっていく。各章、仲間の一人が視点人物となり、今の生活の様子や、複雑な心情を明かしていく。
こうした構成の小説となると私はつい、故人が美化されるか、ミステリアスな存在として描かれるのだろうなという先入観を持ってしまうのだが、これは違った。そこが痛快だった。
菜乃子は成績優秀で美しく、小説家志望で、高校時代からつきあっていた達也と結婚。葬儀の後日、達也から菜乃子が遺した原稿を読んでほしいと頼まれた沙耶が紐解いてみると、意外な内容が……ということはまったくなく、まあ正直、平凡な文章が綴られている。
そんな沙耶はずっと健太が好きな気持ちを隠しているつもりだが、実はバレバレ。などと五人それぞれに、人に打ち明けにくい事情が。
そして迎える最終章が、先述のような先入観を持っている私にとって、最高すぎた。死者を崇めるでもなく、貶めるでもなく、私たちはみんな等しく生きて死んでいく人間であり、美化されるいわれも汚されるいわれもないと思わせる。ユーモラスでクールな一冊だ。
『クロワッサン』1167号より
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