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俳優・田中麗奈さんの着物の時間──20代から現在まで、着物とのつき合いは、人生の変化とともに

今回の「着物の時間」は、俳優・田中麗奈さん。1998年、映画『がんばっていきまっしょい』でデビュー以来、映画、ドラマ、舞台で幅広く活躍。4月3日より主演映画『黄金泥棒』が全国公開。4月28日スタートのNHKドラマ10『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』(毎週火曜・22時〜)に出演。

撮影・青木和義 ヘア&メイク・WANI 着付け・奥泉智恵 文・西端真矢 撮影協力・明治生命館

もうすぐ公開の主演映画にちなんで、帯締めのイエローを差し色にして

田中麗奈(たなか・れな)さん 俳優。1998年、映画『がんばっていきまっしょい』でデビュー以来、映画、ドラマ、舞台で幅広く活躍。4月3日より主演映画『黄金泥棒』が全国公開。4月28日スタートのNHKドラマ10『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』(毎週火曜・22時〜)に出演
田中麗奈(たなか・れな)さん 俳優。1998年、映画『がんばっていきまっしょい』でデビュー以来、映画、ドラマ、舞台で幅広く活躍。4月3日より主演映画『黄金泥棒』が全国公開。4月28日スタートのNHKドラマ10『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』(毎週火曜・22時〜)に出演

ごくごく淡い生成り色、白茶、そして、木枯茶。3色のブラウンが市松模様に配され、どこか抽象絵画のようにも思える紬で、田中麗奈さんは現れた。

「20代の終わりに初めて自分で購入した、思い入れの深い一枚です。今日は久しぶりに袖を通しました」

深く愛着を寄せる故郷の布・久留米絣のポーチと、共演者に贈った、やはり久留米絣のオーダー手ぬぐい
深く愛着を寄せる故郷の布・久留米絣のポーチと、共演者に贈った、やはり久留米絣のオーダー手ぬぐい

10代でデビュー以来、出ずっぱりと言えるほど出演作が続いてきた。その合間を縫うようにして和の稽古事に取り組み、着物にも親しんできたという。きっかけは20代半ば、日中合作映画に出演したことだった。

「中国の俳優さんは演劇の専門大学を卒業した方が多くて、授業のカリキュラムを通じて京劇などの伝統芸能を当たり前にたしなんでいるんです。私も日本の俳優として、和の伝統文化を身につけたいと思いました」

着付け、お茶、日本舞踊、お花。そうして学んだことは演技者としての田中さんを大いに助けてくれることになった。

「一番良かったなと思うのは、時代劇の現場で演技に集中できるようになったことでした。着物での所作に慣れていないと、手はこう動かさなくちゃ、足の運びはこう、と、どうしても演技プラン以前に所作に時間を費やすことになるので」

そして和の学びは仕事だけではなく、日常にも変化をもたらしてくれた。

「お茶を学ぶうちに、だんだんと、お道具の一つ一つがどれも究極に合理的に、しかも美しく配置されていることに気づかされました。影響を受けて、私も、たとえばお八つの時間にお盆に器を並べる時、ここに小鉢を置くのは違うかな、手前に変えたら美しくなるんじゃないかしら、などと意識するようになって。もちろん、自分なりに、なのですが」

そして稽古事以外の時間にも会食や観劇に着物で出かけ、そんな中、着物好きの友人に誘われて訪ねた展示会で今日の着物に出合うことになった。

「広々とした会場で開催された大規模な展示会だったのですが、もう、この着物だけが光り輝いて見えたほど、一目で気に入りました。ぱっと印象に残るブラウンの配色だけではなく、よく見ると緯糸のところどころに太さの違う節糸が走り、繊細な表情が生み出されていて。周到な美意識で作られた一枚だと思います。帯は手織りの博多織。鍋島焼の絵皿のモチーフを、手織りならではの凛とした表現力で織り上げています。バッグはKEITA MARUYAMA。利休バッグのフォルムに洋のファブリックを用いて、モダンなかわいらしさがありますよね」

博多織の伝統工芸士・上石辰男さんによる手織りの袋帯。真珠×金のピアスを装いのアクセントに
博多織の伝統工芸士・上石辰男さんによる手織りの袋帯。真珠×金のピアスを装いのアクセントに

全体をブラウンでまとめた中、一点、帯締めにイエローを入れたのは、間もなく公開される主演映画『黄金泥棒』をイメージして。穏やかな生活に満足しつつも、どこか飽き足らなさを感じていた主婦が、ふとしたきっかけで豊臣秀吉由来の黄金茶碗の強奪計画にのめり込む……というクライムコメディーだ。

「窃盗なんて自分とは関係がない、と決めてしまわずに、もしかしたら自分だって、ある時不意に変貌するかもしれない。そんなふうに思いながら観ていただけたらうれしいですね」

こうして意欲作への出演を続けながら、プライベートでは子育ての真っ最中でもある田中さん。現在は今日の着物と出合った頃のようには、和の稽古事も、そして頻繁に着物を楽しむことも難しいという。

「着物に袖を通すのは映画の舞台挨拶、夏の浴衣、それから七五三や入園式など、娘の節目の行事の時くらいでしょうか。それでもたとう紙を広げると、わあ、きれい、と娘が覗き込みに来るんです。どうも着物が大好きみたい。いつか二人で着物で出かける日を、今から楽しみにしています」

『クロワッサン』1162号より

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