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俳優・中田クルミさんの着物の時間──「京都“着物短期留学”で、ぎゅっと自分の好みを育てて」

今回の「着物の時間」は、17歳でデビュー後、数々の雑誌でモデルとして活躍し、ドラマ『凪のお暇』『ブラッシュアップライフ』『雲霧仁左衛門』、映画『夜明けのすべて』などに出演する俳優・中田クルミさん。

撮影・小笠原真紀 ヘア&メイク・高松由佳 着付け・奥泉智恵 文・西端真矢 撮影協力・ザ・キタノホテル東京

マイ・ファースト夏着物。唐子たちが集まって遊んでいる楽しい一枚です

中田クルミ(なかた・くるみ)さん 俳優。日本大学藝術学部映画学科卒業。17歳でデビュー後、数々の雑誌でモデルとして活躍。ドラマ『凪のお暇』『ブラッシュアップライフ』『雲霧仁左衛門』、映画『夜明けのすべて』などに出演。編み物好き、刺繡好きでもあり、手芸番組『すてきにハンドメイド』にも出演
中田クルミ(なかた・くるみ)さん 俳優。日本大学藝術学部映画学科卒業。17歳でデビュー後、数々の雑誌でモデルとして活躍。ドラマ『凪のお暇』『ブラッシュアップライフ』『雲霧仁左衛門』、映画『夜明けのすべて』などに出演。編み物好き、刺繡好きでもあり、手芸番組『すてきにハンドメイド』にも出演

昨年2月の放映開始以来、エミー賞、ゴールデングローブ賞で作品賞を受賞するなど、快進撃を続けるドラマ、『SHOGUN』。その授賞式の様子が報道された時、全国の着物好きの目がぴかりと光った。出演者である夫・浅野忠信さんとともにレッドカーペットを歩く中田クルミさんの着物が素晴らしかったのだ。ドラマの内容にちなんだ大名行列、そして合戦模様の色留袖に、よく釣り合う重厚な袋帯。これは相当な着物巧者に違いない! 早速話を聞きに行くと、意外なことに、着物歴はまだ3年ほどだという。

「NHK BS時代劇『雲霧仁左衛門』への出演が決まったことがきっかけです。もちろん衣裳部さんはつきますが、撮影中に着付けが乱れた時、簡単なものなら自分でさっと直せたほうが現場の流れが止まらない。友人の着物スタイリスト、マドモアゼル・ユリアちゃんに着付けレッスンをお願いしました」

その時、クランクインまでわずか1カ月。毎日欠かさず着物を着て手に覚えさせ、名古屋帯まで習得して京都の撮影所に入った。

「3カ月間、京都暮らしが続きました。毎日衣裳部さんに着せていただく中で、腰紐の位置がここだと楽だなとか、衿は前をきちっと詰めて、後ろは空けて着るのが好きとか、だんだん自分の着付けが出来上がって。撮影が終わる頃には『ここの紐は自分で締めておいて』と任せてもらえるようになりました」

さらに撮休日にも着物を楽しんだという。

「京都に点在するリサイクル着物屋さんをレンタル自転車で回っていました。たとえば洛北の『正尚堂(せいしょうどう)』さん。骨董も扱うご主人が個性的な着物を揃えています。八坂神社近くの『やゝ』さんも大好きで、今日の絽の小紋もやゝさんで見つけたものです」

鳥の表情が独特で力のある名古屋帯は京都『正尚堂』で購入。バッグは小ぶりの洋服用のバッグを愛用している
鳥の表情が独特で力のある名古屋帯は京都『正尚堂』で購入。バッグは小ぶりの洋服用のバッグを愛用している

遠目にはただの小花柄に見える小紋だが、一つ一つが愛らしい唐子で構成されている。

「そうなんです。かなりレアな模様ですよね。実は、毎日着物に触れているうちに、自分は“人柄”が好きだと気づいて。唐子が飛び回っているこの小紋はまさにど真ん中でした」

“人柄(ひとがら)”とは中田さんの造語で、人モチーフの模様のこと。そういえばレッドカーペットで着た大名行列模様も合戦模様も人柄だ。

「本当ですね。実は、ハリウッドのパーティの着物選びってなかなか難しいんです。オートクチュールドレスの人もいればデニムの人もいて、日本の叙勲や式典のドレスコードがまったく参考にならない。その中で、ドラマの時代背景にちなんだ柄にしようと決めて、実は帯も含めてすべてリサイクル着物で見つけました。合戦柄の色留はフリマアプリで6,400円で手に入れたものなんですよ」

何と、全フリマアプリ史上最も出世した品物かもしれない。そしてそんな舞台裏を隠さない中田さんの精神がすがすがしい。

「私は昔、古着屋でアルバイトをしていたことがあるんです。買いつけにも行かせてもらって、タグがどうとか何年製の希少品かという価値ではなく、自分がいいと感じるかどうか。プロの方には馬鹿にされるようなものをよく仕入れていました。でも、それが店頭で動くし、着物にも同じ感覚で向き合っています。今日の帯もフリマアプリで。格子模様がほしくて手に入れました」

そして中田さんは“短期留学”とつぶやいた。

「着付けを習ってすぐ京都で3カ月間毎日着物を着て、プロ中のプロの衣裳部さんや着物屋さんとあれこれ着物談議をして。“着物短期留学”したことで、着付けも自分の好みもぎゅっと固まったのかな、と。こんなに楽しいものはないし、お呼ばれの場での装いの選択肢も広がって。日本に生まれたなら、30過ぎたら着物を着るべし! そう思っています」

『クロワッサン』1143号より

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